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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
7章 悪党は自分の物に妥協しない
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第6話

イメージトレーニングしているオオクルを置いて、僕は泉の近くに向かう。


「へい、モグちゃん」


「なんだい?

こんな朝早くから」


モグちゃんが眠そうに土から顔を出した。


「僕は朝からオオクルの特訓を見てるんだ」


「知ってるよ」


「モグちゃんは神様なんだろ?」


「そうだよ」


「僕の力の事も知ってるんだよね?」


「知ってるよ」


「流石神様だ」


「いや〜

それほどでもあるよ」


モグちゃんは照れ臭そうに頭をかく。


なんてちょろい神様なんだろう。


「モグちゃんを凄い神様だと見込んでお願いがあるんだ」


「なにかな?

言ってごらん」


「モグちゃんの神様パワーでオオクルを短時間でパワーアップさせよう」


「流石にそれは出来ないよ」


「いいよ。

出来なくても」


「え?」


「モグちゃんは横で神様パワーで強化するって事にしたらいいだけ」


「なるほど。

プラシーボ効果だね」


「そんな感じだね」


そんな訳無いけどね。

そんなんで強くなれたら苦労はしないよ。



なんと驚くべき事に、オオクルはまだイメージトレーニングをしていた。


なんて真面目な奴なんだ。

僕とは関わってはいけない人種だ。


さっさと終わらせてしまおう。


「オオクル」


「はい!師匠!」


「なんと、モグちゃんが力を貸してくれるよ」


「神様がですか!?

ありがとうございます」


「モグちゃんの神様パワーで、オオクルの特訓効率を10倍、いや100倍になる」


「100倍ですか!?

流石神様!

ありがとうございます!」


「よろしくモグちゃん」


モグちゃんが僕の裾を引っ張った。


「100倍は言い過ぎだよ」


「何を今更。

あのキラキラした目を見て、やっぱり出来ませんって言える?」


「……言えない」


オオクルの純粋な期待の眼差しを受けてモグちゃんは後に引けなくなっていた。


狙い通りだ。


「じゃあよろしく」


「どうしたらいい」


「とりあえず、一本締めでもしといたらいいよ」


モグちゃんが溜息を吐いてから大きく柏手をうつ。


「これでよし」


「師匠!

なんか力がみなぎって来る気がします!」


それは間違いなく気のせいだ。


「それが神様パワーだよ」


「神様パワー凄いです!」


「なんか心が痛くなってきたよ」


モグちゃんが何か言ってるけど無視しよう。


「師匠!

これからどうしたらいいですか」


『殺す気でかかっておいで』


僕の言霊でオオクルが動く。


これがナイトメア・ルミナスのみんなに使った鍛錬法。

強くなるには実戦が一番。

死ぬ気で戦うのが結局近道だ。


しかし、オオクルの剣はさっきよりも鋭く強くなっている。


受け止めた僕の剣からの振動が想像以上に強い。


何より僕の言った欠点が完全に無くなっている。


これはイメージトレーニングの成果なのか、はたまたプラシーボ効果なのか?

なんにせよ、かなりのセンスを感じる。


所々荒くなってしまうのは、超能力で無理矢理矯正する。

あとは体が勝手に覚えてくれるはずだ。


しばらくはオオクルに打たせ続ける。

少し疲れが見えてくるまで待つ。


「モグちゃん」


「なに?」


「僕にも神様パワーちょうだい」


「え?なんで?」


「いいから」


「はいよ」


モグちゃんがまた大きく大きく柏手をうつ。

これで僕にも神様パワーを手に入れた。

てな訳で反撃に入る。


『死ぬ気で防ぎなよ』


僕は言霊を飛ばしてから、殺気を込めて連続で打ち込んでいく。


「え?ちょ!まっ!」


「ほらほら、口を動かしてる暇なんてないよ。

殺気に反射的に動けないと一瞬で死んじゃうよ」


オオクルは死物狂いで僕の剣を防いでいく。


僕には神様パワーが付いてるから、ちょっとぐらい本気で打ち込んでも不思議じゃない。

なんて便利なんだ神様パワー。


もちろん、全部防ぎ切れるはずが無いから超能力で無理矢理防がせる。


あとは疲れ果てるまで続けるだけ。

とっても簡単。


疲れて握力が無くなった所で剣を弾き飛ばす。


だけどオオクルは僕の予想を超えて、長く持ち堪えた。

もう限界のはずなのに頑張ったじゃないか。


さて、これで終わり。

とはならない。


オオクルを蹴り倒して、剣を下にして振り上げる。


「え!?

ちょっと師匠!?」


そのまま顔面目掛けて突き刺す様に振り下ろした。

目を瞑ってしまったオオクルの紙一重で止める。


「ダメじゃないか。

目を瞑ったら」


「で、でも……」


「でも……

じゃないよ。

そこで目を瞑ってしまったら、あとは死んでおしまい。

最後まで足掻いた者だけが掴める勝利もあるんだよ」


「そんな事言われても、こうなったらもう無理ですよね?」


「そんな事無いよ。

まだやりようがある」


「例えば?」


「砂を顔面に投げつけて目潰しとか。

股間を思いっきり蹴り上げるとか」


「それ、卑怯じゃないですか?」


「卑怯?

そこ重要?

オオクルは正々堂々カッコよく死にたいの?」


「それは……」


「シャノンを守りたいって言ったのは嘘?

生きる事を諦めて死を受け入れたら誰が守りたい物を守ってくれるの?

死物狂いで命懸けるのは否定はしない。

でも本当に命を捨てたらそれは愚か者だよ。

どんな事があっても生き抜くんだよ。

命を捨てる事なんて誰にでも出来る。

そんな物になんの価値もない。

必要なのはどんな事があっても生きて守り続ける覚悟。

それが無いのなら軽々しく守りたいなんて言ったらダメだ。

そんなの守られる方が迷惑だ」


オオクルは僕を見上げたまま固まってしまった。


「とりあえず、もうすぐお昼だしご飯食べに帰りなよ」


オオクルは何も言わずにフラフラとした足取で里の方に帰って行った。


「やり過ぎだよ」


モグちゃんがそれを見送りながら、僕に文句を言った。


「そう?

あれぐらいやらないと強くはなれないよ」


「まだ子供なんだよ」


「だから?

子供だからって降りかかる火の粉は待ってはくれないよ。

この世は過酷で残酷で理不尽なんだから」


「そうかもしれないけどさ〜」


「モグちゃんが何故僕を足止めしたのか知らないけどさ。

オオクルを手取り足取り強くして欲しいのなら人選ミスだよ。

僕にそんな気は一切無いからね」


「別にそんなつもりは無いよ」


「ならいいけど。

どっちにしても、あそこまでコテンパンにしたんだ。

もう来ないだろうけどね」


「それはわからないよ」


「ないない。

もう心はバッキバキだからね。

さあ、お昼にしよう。

美味しいランチも期待してるよモグちゃん」


「はいはい。

ちょっと待っててね」


さあ、モグちゃんの美味しい料理をたべたらダラダラゴロゴロするぞー。


……そう思ってたのに。

そう思ってランチ食べて穴蔵に潜ろうと思ったのに。


「師匠!

昼からもお願いします!」


なんで元気に来とんねん。

もう午前中の事忘れたの?

それともご飯食べたら元気になったの?

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