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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
6章 悪党は世界の全ての敵となる
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第29話

ソフィアは王都が見渡せる高台にある自宅のバルコニーで、月を見ながら度数の高い酒を飲んでいた。


彼女は視力が人並み以上に良く、ここから王都での戦いを見ていた。


そんな彼女は飲まずにはやってられなかった。

それほどまでに衝撃的な闘いだった。


「あいつが言っていた通りね。

悔しいけど、今のギルド協会にあんな奴らとまともにやり合える程の戦力は無いわ」


「儂の言った通りだろ。

今は関わるべきでは無いと」


「キャー!

ちょっと!

何処から現れてるのよ!」


バルコニーの外からネズカンが柵を飛び越えて来るのを見て、ソフィアは叫び声を上げた。


「ガハハハハ!

可愛い叫び声だの」


「あんたねぇ!

普通に不法侵入よ!」


「こんな夜更けに女性が1人酒なんて不用心だぞ。

変な奴が押しかけて来たらどうする?」


「今あんたに見せてやろうかしら」


殺気の籠ったソフィアの声もネズカンは一切気にしてないように笑う。


「そうプリプリするな。

いい酒が手に入ったんだ」


ネズカンが片手に持った一升瓶をブラブラさせて見せる。


「まさかと思うけど、それだけの為に勝手に家まで押しかけて来た訳じゃないわよね」

「いや。

用事はこれだけだぞ」


「そんな事で不法侵入するんじゃないわよ!」


「ガハハハハ。

そう硬い事言うな。

いい酒が手に入ったらいい女と飲みたいと思うのは男の性だ」


「都合のいい女って意味じゃないでしょうね」

「まさか。

儂が一番に思い浮かぶいい女はソフィアしかおらんぞ」


「相変わらず、よく回る口ね」


口では憎まれ口を叩くものも、ソフィアは悪い気はしなかった。

不法侵入が気にならなくなって来ている程だ。


「まあ、いいわ。

丁度今晩は飲みたい気分なのよ。

付き合わせてあげるわ」


「それはツイとる。

ではお邪魔するとしよう」


2人は月を肴に乾杯をした。

しばらく黙って酒を楽しんでいたが、ソフィアが口を開いた。


「あの王都を飛び回ってたのがナイトメアよね?」


「ああ、儂も初めて見たが……

あれは規格外だな」


「ええ。

それだけじゃないわ。

まさか美術館の館長がドーントレスの幹部朱雀だった事も驚きだし、その戦闘力もかなりの物だった。

なのにそれを圧倒したナイトメア・ルミナスの女性もナイトメア程では無いにしても規格外よ」


「あれでNo.2では無いがな」


「嘘でしょ!?

まさかあんなのがゴロゴロいるって言うの!」


「ゴロゴロはおらんな。

トップはナイトメア。

そして構成員は7名で全て女性。

全員ナイトメアに劣るがソフィアが見た者程の実力がある」


「どうしたの急に?

今まで詳しい事は何も話さなかったのに」


ソフィアが疑いの目でネズカンを見る。

その表情はいつもとは違う真剣な顔。

酔いのせいで口を滑らせている感じでは無かった。


「構わんさ。

どうせ明日には王国全土に、いや世界中に知れ渡る」


「まさか犯行声明でも出すって事?」


「いいや。

明日正式に王国が発表する。

裏ギルド、ナイトメア・ルミナスはテロ組織としてホロン王国の敵とみなすと」


「待って!

裏ギルドはあくまでギルド協会に属して無いギルドの事よ。

法律的にはグレーゾーン。

だから今まで王国も大概の事は目を瞑ってきたし、やり過ぎた所は協会が対応して来た。

なのに協会に相談無く裏ギルドを国が全力で粛正するとなると……」


「世界からホロン王国は、裏ギルドは許さないと言う方向に舵を取ったとみなされるだろうな」


「そんな……」


裏ギルドは全て排除する。

その見せしめに選ばれたのがナイトメア・ルミナスだと見られてもおかしくは無い。


今まで絶妙に保たれていたバランスが崩れる。

先の事件に関わっておらず生き残っていた裏ギルドは、王国に真っ向からやり合いたく無いなら協会に入るか、解体の2択を迫られる事となる。


「いいではないか。

これでソフィアが目指した健全なギルド運営が実現に近づいた」


「それはそうなのだけど……」


一昔前はギルドなんて物は使い捨て同然の扱いだった。

それをソフィアは一括で管理する事で、ギルドメンバーを守り、利用者も騙される事の無い健全なギルド運営を目指して来た。


だけどルールを作れば、そのルールによって救えない者達が現れる。

それもソフィアは痛い程理解していた。


その逃げ口として裏ギルドが一役買っていたのもわかっていた。

まだルールに溢れた人を助ける受け皿はギルド協会には用意出来ない。


「今の――」


「言うな」


弱音を吐こうとしたソフィアをネズカンが止める。


「他の誰が言ってもソフィアだけは言ってはならん。

言えばソフィアが掲げた理想が夢物語で終わってしまうぞ。

君は素直に理想に近づいたと喜べばいい。

そして更に理想を追い続ければいい。

それまでに取りこぼしてしまいそうな者の為に儂みたいな世捨人がおる。

なあに、世の中優しい人は沢山おるぞ。

この世は捨てた物じゃない」


明日からの事を考えるとソフィアは不安だった。

だけどその不安が少しは和らいだ気もした。


明日からまた忙しくなる。

だけど今だけは晩酌を楽しもうという気になれる程だった。


「そう言えば、前に飲みに行く約束したのはこれでいいわよね」


「おいおい。

ディナーと一緒だと約束したではないか」


「仕方ないわね。

あなたの奢りならいいわよ」


「ん?そっちの奢りだったはずでは?」


「そうだったかしら?」


「まあよい。

そのかわりその後の一杯も付き合ってもらうぞ」


「それも奢りならね」


「その後のホテルもな」


「調子にのるな!」


その後も2人の口からはどうでもいい話しか出てこなかった。

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