第25話
財宝財宝〜
王家の財宝〜
楽しみだな〜
腕もすっかり治ったし。
正義を前に尻尾を巻いて逃げて来た事だし。
セキトバ遺跡の神殿に急いで行かなくちゃ。
ロビンコレクションを持ったスミレと合流予定だからね。
さあ財宝だ。
一体どんな財宝が出てくるのか楽しみで仕方ないよ。
おや?
トレインじゃないか。
感心感心。
ちゃんと僕の言いつけ通りリリーナの様子を見に行ってたな。
女の子の扱いには慣れてるだろうからね。
なんでここにいるかはわからないけど……
てっきり美術館で何かしてると思ってたよ。
まあいっか。
別に問題無さそうだし無視しよう。
僕はご機嫌に奥の崩壊したガーゴイルを真っ二つにしたボールに降りる。
「お待たせスミレ」
僕はスミレと二人っきりなのでナイトメアスタイルを解く。
「いえ、今来た所よ」
そういや、前にリリーナがこう答えろって言ってたな。
なるほど、この答えが正解なのか。
確かに悪い気はしない。
でも、こう言わないからって普通殴るか?
「さあ、そろそろ時間だ。
始めよう」
僕は魔力を展開して壊れた二つの台座を復元して、一つにクリスタルをもう一つに天秤を置く。
その天秤に二つの像を置く。
像は同じ重さの為、天秤は傾いたまま。
その鳥の像の上と人の像の足元に、大きいの4個と小さいの3個の二つに分けたマトリョーシカをそれぞれ置いた。
すると天秤は均等になり、埋め込まれた宝石の角度が変わる。
「これで準備よし」
僕は更に天井をも復元していく。
元の通り、一筋の月光が差し込む状態にする。
そして、月が傾き月光がクリスタルに当たって5つの光が真っ直ぐにもう一つの台座の方へ伸びる。
その光はそれぞれ、天秤の宝石、二つの像のルビー、二つのマトリョーシカの水晶に当たる。
屈折した光は地面に当たる。
まるでサイコロの5のようだ。
すると、ゴゴゴゴと音が響いて光が当たった所の床がスライドしていく。
そこには更に地下へと続く階段が現れた。
「これが王家の財宝への道なのね」
「そうだよ。
ロビンは一見すると一番価値が無さそうなマトリョーシカを重要な鍵にしたんだ」
そこになんの意図があったかまではわからないけどね。
ただ単に自分の作品であるマトリョーシカに注目して欲しかったのかもしれない。
きっとそんな単純な理由だろう。
「早く行きましょ」
スミレが僕の腕に抱きついて急かす。
なんか積極的だね。
スミレも早く財宝を見たいんだな。
「そうだね、行こうか」
僕達は階段をゆっくりと降りていく。
所々に蛍光色の光を放つ石で作られていて、周りが微かに見える程度には明るい。
スミレは僕の隣でご機嫌そうだ。
僕と一緒だね。
財宝が近づいてくるとワクワクが止まらない。
階段を降りると広い部屋が出て来た。
そこに魔坑石で作られたいろんな像が規則正しく並べられていた。
近づいて見てみると、床に正方形が描かれてコマ割りされている。
これは……
「チェスね」
スミレの言う通り、これはチェス盤だ。
それにしても駒が全部リアルだ。
ちょっと荒いけど。
これはガーゴイルの作者と一緒だな。
僕達は手前のキングのいるはずの空いたマスに立つ。
すると隣のクイーンの駒が砕けて消えた。
「私にクイーンになれって事ね。
ウフフ。
ヒカゲのクイーンね」
スミレはなんだか嬉しそうに隣のマスに移動する。
スミレが移動し終わると僕達の駒が黒く染まった。
僕達が後攻だ。
チェスは先攻が若干得らしい。
でも僕には黒が似合うから仕方ない。
それに、実力差が大きければ関係無い。
相手のキングの前のポーンがドシドシと歩いて前に出てくる。
「チェスは得意?」
スミレが僕に尋ねる。
「駒の動きがわかる程度」
なんたって僕にはチェスをしてくれるような友達は前世含めても誰もいない。
だから先攻後攻なんて関係ない。
「でも、最も肝心なルールは知ってるよ。
じゃあ君。
ちょっと前に行ってくれる」
僕は自分の前のポーンに声をかけて動かす。
目の前の視界が広くなった所で、ナイフを生成して相手のキングに向かって投げた。
ナイフがキングに刺さると同時に魔力を爆発させる。
見事キングを粉砕した。
「相手のキングをやっつけたら勝ちって事」
「そうね。
これで私達の勝ちね」
さて次に行きますか。
おや?
全部の残った駒がみんな僕達の方を見てるぞ。
黒の駒もいつの間にか白に変わってる……
「どうやらあなたの勝ちにケチをつけるみたいね」
おかしいな。
勝利条件は間違ってないはずなんだけど。
チェックメイトって言わなかったらいけないってルールでもあったっけ?
全ての駒がゆっくりとこっちに迫り来る。
「とりあえず全部の駒やっつけたら勝ちになるさ」
僕はオーロラ色の半透明の刀を生成する。
「そうね。
それが確実ね」
スミレもオーロラ色の半透明の剣を生成した。
「その剣綺麗だね」
「ありがとう。
少しでもあなたに追いつかないといけないから」
僕とスミレは迫り来る駒を片っ端から切り裂いていく。
大した時間もかからず、最後は相手のクイーンの駒をスミレが真っ二つにして終わった。
「ヒカゲのいる盤面のクイーンは私一人で充分よ」
最後にスミレがクイーンの駒に言った。
言ってる意味はわからないけど、なんか狂気じみた物を感じる。
ちょっと怖い。
奥の扉がゆっくりと開いた。
「さあ、次に行きましょう」
さっきまでのが嘘みたいにスミレは笑顔を向けて、また僕の腕に抱きつく。
きっとストレスでも溜まっているのだろう。
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