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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
6章 悪党は世界の全ての敵となる
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第14話

素晴らしい朝が来た。

今日は快晴。

夜には綺麗な満月が浮かぶはずだ。


ついに待ちに待った決行日。

今から楽しみで仕方ない。


僕はリビングのカーテンを開けて朝日を体いっぱいに浴びる。


朝目覚めるとアンヌの可愛い寝顔が見れて僕は超元気。

もちろん指一つ触れてはいない。

僕の美学は絶対だ。


だけど、これはなかなかハードな戦いだ。

もしかしたら、今晩のお勤めよりハードかもしれない。


ピンポーン。


二人分の朝食を準備しているとチャイムが鳴った。


最近よくチャイムが鳴るね。

でも出ない。

だってめんどくさいから。


ガチャガチャと鍵を開けようとする音がする。

リリーナが予備の鍵で開けようとしているな。


だが残念。

先日扉を壊したルナが交換したからね。

鍵も変わっているのさ。

もう君の鍵は使い物に――


ガチャリ。


あれ?鍵が開いた?

なんで?


ドタドタと足音がしてリビングのドアが乱暴に開かれる。


「だから!いるならさっさと出なさいよ!」


「あの……

扉新調されてるんだけど……」


「知ってるわよ!」


「なんで鍵持ってるの?」


「ルナに貰ったからよ」


なんで僕の周りには僕の部屋の鍵を勝手に渡す奴ばっかりなんだろう?


「それで、こんな朝早くからなんかよう?」


「あなたは私な用が無いわけ?」


「無いよ」


「なんでよ!」


「いや、なんでって言われても……」


無い物は無いんだが……


いつにも増して無茶苦茶な事言ってるぞ。


「ねえ、私といつぶりか分かる?」


「えーと……

一週間ぶりかな?」


「もっとよ!

なんで何も言って来ないわけ?」


「別に用事無いし」


リリーナが凄い形相で睨む。


何をそんなに怒っているのだろう?

僕は何もしていないのに。


「まあ、いいわ。

私も朝食まだなの。

私の分も用意して」


リリーナは勝手な事を言って、勝手に占領している戸棚を開けてコーヒーを準備し始める。


だけどキッチンを見て手が止まった。


「あれ?なんでもう二人分用意してるわけ?」


「おはようございます。

何か騒がしいですね」


そのタイミングでアンヌが寝室から出て来た。

リリーナとアンヌの目が合う。


「リリーナさん。

違いますからね」


何が違うのかわからないけど、アンヌの声はリリーナには届いて無いみたい。


リリーナは持っていたコーヒーカップとコーヒー豆を床に落とした。


「あーあ、勿体ないな〜」


コーヒーカップも割れちゃったじゃん。


「そういう事だったのね」


リリーナがポツリと呟いてから、涙目になって出口へと走って行った。


そんなにお気に入りのコーヒーカップだったのかな?


「ちょっとリリーナさん!

勘違いです!」


アンヌが叫んで止めようとしだけど、リリーナはそのまま飛び出して行った。


何がどう勘違いなのか良くわからないけど、これ片付けるの大変だな〜


「ヒカゲ君!」


僕は仕方なしに片付けようとしゃがみ込んだ時にアンヌが僕を呼んだ。


「何?」


「何?じゃありません!

早く追いかけてください!」


「何を?」


「リリーナさんをです!」


「なんで?」


「いいから早く行きなさい!」


なんか良くわからないけど、僕はリリーナを追いかける。

めんどくさいから、適当に時間潰して戻ってこよう。


「リリーナさんとちゃんと話するまで帰って来たらダメですからね!」


後ろからアンヌに釘を刺された。

仕方ない。

とりあえずリリーナの部屋に行くか。



リリーナの部屋に行ってチャイムを鳴らす。


「なによ」


しばらくして中から不機嫌そうな声が聞こえて来た。

若干声が掠れている。


「いや、急にどうしたのかなって思って」


僕は扉越しに話かける。


正直なんで追いかけさせられたかわかっていない。


「……」


扉のすぐ向こうにはいるみたいだけど、一切返事が無い。


「あのリリーナ。

聞いてる?」


やっぱり返事が無い。


どうしたものか?

……まあ、いっか。


「なんでアンヌさんがいるのよ」


帰ろうと思って離れようと思った時、中から声がした。


「王都にしばらくいるんだって。

その間泊めてるんだよ」


「いつから?」


「二日前から」


「同じベットで寝てたの?」


「そうだよ」


「なんで?」


「だって僕の部屋ベット一つしか無いし」


急に扉が開いて僕は部屋に引きずり込まれた。


「え?ちょ、ちょ、ちょ」


そのまま胸ぐらを掴まれて壁に叩きつけられた。


いったいどこのヤンキーだよ。


「どこまでやったの?」


「なにが?」


「一緒に寝たんでしょ?

どこまでやったの?」


「なにも」


「本当に?

指一本触れて無いって誓える?」


リリーナがかなり顔を近づける。


「当たり前じゃないか。

僕とアンヌは姉弟だよ」


確かに誘惑は凄いけどね。

でも僕は我慢出来る子。


「でも血は繋がって無いのでしょ?」


「それはそうだけどね。

でもアンヌにそんな事しないよ」


リリーナは黙って僕の目をじっと見る。

なんとなくその視線は逸らしたらいけない気がした。


「あなたは私の物よ。

あなたが最終的に何人と結婚しても構わない」


「いや、誰とも結婚する気は……」


「だけど私が一番よ。

第一夫人の座は誰にも譲らない。

私にした事以上の事を他の女に先にするなんて絶対嫌」


「あの、僕の話を――」


僕の口はリリーナの唇に塞がれた。


まただ。

何故かリリーナのキスは避けられる気がしない。


僕は肩を持って引き離そうとするも、一向に離れない。

僕は諦めてリリーナが離れるのを待った。


しばらく経ってやっと離れたリリーナが言う。


「これで何回目か覚えてる?」


「2回目だね」


「良く覚えてたわね。

絶対忘れたら許さないから」


「忘れられないよ」


「他の女にキスされるのは許してあげる。

その代わりされたら報告しなさい。

今みたいに上書きしてあげるから」


途轍も無く凄い事言ってる自覚あるのかな?

とても変な事言ってるよ。


「でも、あなたからキスするのはダメよ。

まずは私が最初。

その他の事もそう。

先に他の女を抱くのも許さない」


「僕も男だからそれなりに性欲は溜まるのだけど……」


「なら私にぶつけなさい。

私ならいつでも抱かせてあげる」


「そんな事言ったらダメだよ」


「なら一生禁欲してなさい」


「そんな殺生な」


マジかよ。

こいつ本気の目してやがる。

これは早くリリーナにいいお相手が出来ないとマズイぞ。


「私は今日あなたに会いに行ったの」


リリーナは急に話を変えた。

さっきの事はあれで完結したって事?


僕は全く納得してないのだけど……


「なんか用事?」


「用事なんて無いわ。

ただあなたに会いたかっただけ」


「君も変わってるね」


「いいでしょ。

私は寂しかったんだから。

あなたはなんとも無かったみたいだけどね」


リリーナは僕の胸に顔を沈める。

若干シャツが濡れ始めた。


「泣いてるの?」


「一つお願い聞いて」


「僕に出来る事ならね」


「明日学校帰り一緒に帰って」


「別にいつも君が無理矢理一緒に帰ってるじゃないか」


「お願い。

あなたから一緒に帰ろって言って」


リリーナは細かく体が震えていた。


そうか、そうなんだね。

君も今晩闘うんだね。

自分の信じる正義の為に。


「いいよ。

リリーナ。

明日は一緒に帰ろう」


「約束よ」


「ああ約束だ」


僕のこの些細な約束が君の正義の糧になるなら約束をしよう。


悪党はいつも正義の糧になる物だから。

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