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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
6章 悪党は世界の全ての敵となる
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第12話

土曜日の王都は多くの人で賑わっている。

平日とは違い、家族連れや若者達が街に溢れていた。


リリーナはカフェのテラスから、人目を憚らずイチャイチャしているカップルを羨ましそうに見ていた。


「リリーナちゃん。

顔が乙女になってるよ」


「あれは羨ましいけどね〜」


「リリーナちゃんもヒカゲ君とあんな感じにイチャイチャしたいよね〜」


リリーナは思わず深いため息を吐いた。


「それで、アークム君の様子はどうなの?」


「押してダメなら引いてみろ作戦は上手くいってる?」


「そろそろヒカゲ君の方が痺れを切らしてアプローチがある頃でしょ?」


リリーナはゆっくりと首を横に振る。


「全然ダメ。

全くと言っていい程。

喋りかけてくるどころか、一人を謳歌してるみたい」


再び大きな溜息を吐く。

その目は薄らと涙目にも見える。


その表情に三人娘はトキメキを覚えた。


「リリーナちゃんこんなに愛おしいのに!」


「リリーナちゃんを泣かすなんて許せない!」


「アークム君許すまじ!」


三人娘はリリーナの恋の成就に闘志を燃やした。

それを見たリリーナは心の中でほくそ笑んでいた。


「でもアークム君は強敵よね。

リリーナちゃんこんなに可愛いのに」


「ことごとく作戦が上手くいかないなんて」


「もしかしたら女に興味無いのかも?」


三人娘は顔を見合わせて固まる。

ヒカゲ・アークムは男にしか興味が無いと言うのが、三人の中で事実となろうとしていた。

流石にこれはマズイと思ったリリーナが口を挟む。


「それは無いと思うわ。

ヒカゲ君はシスコンだし」


その言葉に三人娘は驚きリリーナに詰め寄る。


「それ本当なの!?」


「シスコンって事はあの特待生の二人の事よね!?」


「確かに二人とも可愛いよ!

でも流石に妹相手は引くよ!?」


「あの二人に対してもだけど、何よりお義姉さんに対してはとても素直なの」


リリーナは更に追い討ちをかける。

本人の知らない所でヒカゲ・アークムがシスコンだと言う事実が確立していく。


この三人娘がその噂を週明けには広める事がこの時点で確定した。


「お義姉さんってあのアンヌ・アークムよね?」


「私一度見た事あるけど、確かに綺麗で優しそうな人だった」


「確かに強敵だけど大丈夫!

リリーナちゃんも負けて無い」


三人娘は強敵の出現に更なる闘志を燃やす。

リリーナはそれを横目に再びイチャつくカップル達に目をやる。


「いいな〜」


リリーナの口から思わず小さな本音が漏れた。

それを聞き逃す三人娘では無い。


「リリーナちゃん任せて!」


「次なる作戦を考えて来るから!」


「そうと決まったら徹夜で作戦会議だ!」


三人はお金だけ置いて足早にカフェを後にした。

その凄まじいパワーに流石のリリーナも少し気圧されてしまった。


入れ替わるようにルナがリリーナの前に座った。


「凄まじい三人ですわね」


「あら、ルナ。

どうしたの?

珍しいわね」


「あなたがお友達と談笑してる姿の方が、よっぽど珍しいわよ」


お互い共笑顔だ。

だけど二人の間に火花が散りそうな視線がぶつかり合う。


「わざわざ喧嘩を売りに来たわけ?」


「とんでもございません。

私は報告に来てあげたのですよ」


「報告?」


「昨日、ヒカゲ君とデートをしました」


「なっ!?」


ルナの衝撃発言にリリーナは言葉に詰まった。


「どういうつもりよ」


「あら?

私はあなたがあえてヒカゲ君を焦らしていると聞いて、様子を見に行ってあげたのよ。

友達想いでしょ?」


「それがなんでデートになるわけ?」


「先日助けて頂いたお礼が出来てませんでしたから。

ご恩を返さないのは王族の名折れです」


リリーナが鋭い眼光で睨むも、ルナはどこ吹く風で澄まし顔を見せる。


「それで、ヒカゲはどんな様子だったわけ?」


「全く動じて無かったわよ。

それどころか、あなたはお友達といる方がいいとさえ言ってたわ」


リリーナは露骨に不機嫌な顔になる。

ルナはそれを見て目を丸くした。


宣教師学園ではいつも作り笑顔で過ごしていたリリーナからはありえない事だった。


その変化に友達として微笑ましく思うも、少し意地悪をしたくなった。


素直に祝福できるほどルナは性格が良く無かった。


「でも、デートは快く来てくれましたよ」


「嘘よ!」


「せっかく高級クレープ店にご招待したのに、緊張して全然お食べになりませんでしたわ」


「絶対嘘!」


ムキになって大声を出すリリーナに他の客の視線が集まる。

そんな中でもルナは余裕の笑みを向ける。


「嘘よね?」


その笑みに不安を隠しきれ無い弱々しい声に流石のルナも心が痛くなった。


「嘘ですよ。

寮から連れ出すのにも一苦労でしたわ」


その言葉にリリーナはほっと胸を撫で下ろした。


「リリーナ。

あなたは変わりましたね。

いえ、宣教師学園に入る前に戻ったと言った方が正しいわね」


「何も変わってないわよ」


「いいえ。

宣教師学園にいた頃は常に笑顔の裏に感情を隠していたでしょ?」


「そんな事は――」


「私達は似た者同士なのよ。

残念ながらね。

だから誤魔化しは効かないわよ」


「別に誤魔化してるつもりは無いわよ。

私は変わったつもりは無いだけよ」


リリーナは気恥ずかしいさで顔を背けた。

それを見たルナは本題を話すのをやめた。


「私はそれでいいと思うわよ。

私もだけど、あなたは宣教師学園に向いて無かったのよ。

お友達は大切にしなさい」


ルナは席を立って伝票を取る。

その手をリリーナが抑えた。


「どこ行くのよ」


「どこって、帰るつもりですけど?」


「なにか話があるんでしょ?」


「そんな事は――」


「私達は似た者同士よ。

残念ながら。

あなたがナナリーを連れずに私に会いに来るなんて、ヤバい事に首を突っ込むつもりでしょ。

今まで散々お互いに巻き込んで来たのよ。

今更遠慮なんかしたらぶっ飛ばすわよ」


「良く言いますわ。

勝手に宣教師学園を辞めたくせに」


「なに?

あなたも辞めたいの?

なら手伝うわよ」


「遠慮します。

私はまだ王位継承を諦めて無いので」


「わかってるわよ。

あんたに国王になって貰って私は王国一の公爵にしてもらうわ」


二人して悪い顔で笑う。


幼い二人が交わした子供の戯言。

でも、今の二人はそれを戯言で終わらせるつもりは毛頭無い。

彼女達は本気でこの国で成り上がろうとしていた。

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