常に護衛が付くことになりました
後のことはよく覚えていない。
爆発の音で耳がおかしくなり、アルが何か言ってもさっぱり聞こえず、くらくらしながらアルに手を引かれて森の中を走った。
へろへろ状態で離宮に着いたらもう大騒ぎ、お母さまと王妃さまが駆け付け、半泣きで抱き締められ……どうやら、私はそのまま気を失ったようだ。
次に意識を取り戻したのは、もう、王都の屋敷だった。
……移動、早っ?!
そして目覚めてすぐに医師の診察。問題なしとの結果が出た途端、オリバー兄さまに抱っこされてカールトン領へ。
で、
「アリッサは、しばらく屋敷から外出禁止」
と、お父さまから宣言された。
えええ~?!
少なくとも年内は“一歩”も屋敷から出るなと?
今年の収穫祭では、孤児院のみんなとトゥーレンを作るつもりだったのに。
ひどいよー……。
拉致監禁犯め、許すまじ。
悶々とした日々を過ごしていたら、お父さまから呼び出された。
ブス~ッとした顔で執務室へ行くと、部屋の中にはメアリー、リック、テッドが並んでいる。
まさかリックとテッドが屋敷にいるなんて。
どうしたんだろう?
「これまで、お前はなるべく自由にさせていたけれど……これからはきちんとそばに護衛を置くことにしたよ」
開口一番、お父さまはそんなことを言い出した。
「護衛?」
「メアリーは元々、護衛の役目も兼ねた侍女として雇っていた。今後は正式にアリッサの護衛兼侍女だ。どんなときでも、常にそばに付けなさい」
「え?ええっ?!メアリーが??」
全然、強そうじゃないですよ?
そもそも、最初の頃は鈍くさかったですよ?
私が混乱していたら、メアリーがにこにこと説明してくれた。
「あたし、魔力が高いんです。でも、魔法は全然使えなくて。代わりに、身体強化がすごいんですよ~。そこを旦那様に評価いただいて雇ってもらったんですけど。今まではそのこと秘密にしてましたが、今後は何かあったときのお嬢様の盾ですから、ちゃんとおそばにいますね!」
「へっ?!盾?!そ、そんなのダメ、いくら身体強化しても鋭い剣で思いっきりぐさっとされたら……」
「刺さりません」
「……この間の小屋の爆発みたいなのが起きたら……」
「火竜の炎も耐えれます」
マジか。
メアリー、すごいな。
「それに以前から武術の特訓も受けてます。だいぶ上達したので、たぶん、ただの盾より役に立てますよ」
「……」
いや、でも、やっぱり私を守ってメアリーを危険な目に合わせるのはどうかと……。単純に私がもっと護身術や魔法を鍛えたらいいだけの話じゃない?こんな小娘に護衛なんておかしいよ。
戸惑う私に構わず、お父さまは次にテッドを指した。
「テッドも身体強化が使える。いずれはお前の護衛を務められるよう、今日からこの屋敷に住んで訓練を始めさせる」
「よろしく、お嬢!」
え、テッドも?!
「そしてリックだが、彼は魔法が使えるようだ。将来、お前が魔法学院へ通うときに同じクラスでそばに付けるよう、学問と魔法を教えることにした」
「ということで、兄弟揃って世話になるよ、お嬢」
……意味が分からない。
将来、リックと一緒に学校へ行くってこと?リックは2才も年上なのに?
「お嬢と同じ学校へ通うためには、学力だけじゃなく貴族の礼儀作法も覚える必要があるんだ。今から学んでも、入学まで間に合うか怪しいが、とても恵まれた機会をもらったよ。頑張るからな」
ウソ~?
なんか……予想もしない展開になってきたよ……?




