収穫祭に下僕…じゃなくてお友達ができました(1)
収穫祭を迎えた。
カールトン領は農地が多いこともあって、この祭りは三日間 盛大に行われる。お父さまは領内のあっちこっちを回って祭事を行うから、大忙しだ。
また屋敷には、各農地から挨拶だの奉納だのがあって、お母さまやお祖父さま、お祖母さまも大忙し。
兄さまや姉さまも手伝いに回っているので、私に構う人はほとんどいない。
ということで、収穫祭の2日目の午後、私はメアリーが用意した庶民の服を着て、メアリーと共に町に出ていた。
「お嬢さま。あたしの手を離さないでくださいね」
「ええ、わかっているわ」
町は人で溢れている。賑やかで楽しい。
町角には、野菜で作られた様々なオブジェが飾られている。祭の間、秋の精霊が宿る器になるものだ。トゥーレンと呼ぶらしい。
人っぽいものや、動物っぼいものなど、形は多岐に富んでいる。コンテストもあるらしいので、そういうのに出すトゥーレンは、製作に一ヵ月掛けるとか。……野菜、腐らないのかな??
メアリーの家は、下町の一角、少し入り組んだ路地の奥にあった。
三階建ての建物の三階に住んでいるという。前世でいう集合住宅、アパートのようなものかな?
「本来なら、お嬢さまのような人が来る場所じゃないし、みすぼらしいけど……」
メアリーは恐縮しながら、家にいれてくれた。
本当は、収穫祭で屋台がいっぱい出ているので、そこをメアリーと弟達とで回る予定だったのだ。
だけど、家族で祝う感謝の収穫祭に、私が屋敷に一人で残されているのを見て、メアリーは可哀想に感じたらしい。少しでも温かい家族のぬくもりを……と家へ招いてくれたのだ。下心いっぱいの私に、なんて優しい心遣い……。
メアリーの家に入ると、「お帰り、ねーちゃん!」という元気いっぱいな声とともにドーンと小さな影が体当たりしてきた。
「ただいま、テッド」
「そいつが、おじょーさま?」
「こら、お嬢さまをそいつなんて言うな」
メアリーと同じくるくるの茶髪と茶瞳の生意気そうなガキ……もとい、男の子が私を値踏みしている。
「お帰りなさい、お姉ちゃん」
もう一人、やはり茶髪茶瞳の、やや落ち着いた雰囲気の男の子が奥で言う。
「ただいま、リック」
うーん、二人ともメアリーより懐柔が難しそうな顔つきだわ。大丈夫かしら。