世界は違えど悩みは同じ
「まあ、流れ星に願い事をしていたの?わたくし達も行けば良かったかしら」
翌朝、朝食を食べながら王妃さまがにこにこと仰った。
「あら、イライザは何を願いたいの?」
「それはもう、チーズよ、チーズ!アリッサが持ってきてくれたチーズを食べてから、ますます食べたい熱が高まっちゃって。あ、チーズじゃなくてアリッサが早く商会長になりますように、の方がいいかしら?」
あらら。これは王妃さまのためにもっと商売を頑張らなきゃダメかしらん。
「チーズくらい、実家から送ってもらいなさいよ」
「いやよ、兄に頼みごとするなんて。……で、コーディなら何をお願いするの?」
「そうねぇ……」
お母さまは首を軽く傾げた。私は少しわくわくして答えを待つ。お母さまはどんな願いがあるんだろう?
するとお母さまは、恐ろしく真剣な顔になった。
「……やっぱりシワかしら」
「え?なんですって?」
「……最近、ほうれい線が気になるのぉぉぉ!」
「! コーディ、あなたの線なんて、うっすいじゃない!わたくしなんて……わたくしなんて、最近、目の下がたるみ始めているのよ!?」
「それはマッサージすれば、だいぶマシになるわ。あと、あと……目尻も少しシワがあるの。この頃、笑うのが怖くなってきて……」
「わかる!わかるわぁ……!」
───ありゃ。美容談義が始まってしまった。
これは、前世の知識を使って美容液とか作った方がいいのかしら。でもなー、私、リップクリームとハンドクリームくらいしか使ってなかったからなー。
えーと、えーと……簡単でいいなら、へちまがこの世界にあれば、へちま水が作れるよねえ。リップクリームは私も欲しいから、ミツロウで作れるかな……?
考えていたら、アルが覗き込んできた。
「アリッサもシワの心配をしているの?」
「いえ。女性の肌悩みは世界共通だと認識したので、解決できないか考えています」
「……解決したら全女性の救世主になるね」
「私も将来、シワに悩みそうですからね~。今から対策を考えておくのも悪くないかも知れません」
「ううーん、僕としては40、50になってもシワのない女性は怖いけどなぁ」
「そうですか?まあ、でも確かに、シワの似合うカワイイお婆ちゃんになる方がステキですよね。とはいえ、小ジワが目立ちはじめたら、やっぱりジタバタしちゃうかも……」
「アリッサなら、きっと笑い皺の可愛い女性になるよ」
「ええ?そのシワは、アルのせいじゃないですか?!」
昨日の夜、どれだけ笑ったことか。
……私達は小さい声でぼそぼそ話していたのに、お母さまと王妃さまにギロリと睨まれた。
「遠い話だと思ってるでしょう?そのうち、泣きを見るわよ!」
いやいや、さすがに5才だからね。
シワの心配は早すぎるってば。
……私はこの頃、眉間のシワが気になります。
これってつまり、いつも眉間にシワ寄せているってこと?
怖い顔をしているお婆ちゃんじゃなく、笑いジワの可愛いお婆ちゃんになれるといいなぁ。




