いろいろと制限ある電話の存在を知る
ブクマが320件突破……うう、ありがとうございます……。
───いい加減に起きなさい、遅刻するわよ!
───ううう、あと5分……。
───今日は期末でしょう。ちゃんと朝ごはん食べないと、頭が働かないじゃない。さあ、起きなさい!
「期末試験!」
叫んで飛び上がり、私は広い部屋を見渡して、(ああ……)と溜息をついた。
すごく久しぶりに前世の夢を見た。前世の記憶を取り戻してから最初の二月くらいはちょこちょこ見ていたけど、そういえばすっかり見なくなっていた。
お母さん……思い出そうとしても顔がぼんやりしてきた気がする。あれだけ毎日つるんでいた友達も、フルネームが出てこない。
そのうち、前世のことはほとんど忘れてしまうんだろうか。今世の私なんて、前世の私に依っている分がかなり多いのに。それはとても悲しい気がするのだけど……“今”を生きているのなら、その方が自然なのかなあ。
ディから手紙が届いた。
マシューのプレゼントで手を尽くしてもらったので、お礼の手紙を出したのだ。……でも、ホントは直接会ってお礼を言いたい。
ただ、今の騒ぎの中、水龍公爵家へは行けないのよね……。
―――ディの手紙に変わったものが同封されていた。
高さも厚みも3㎝くらいの円筒形の白い何か。
持ち上げると上下に割れ、間に何枚もの薄い羽が現れる。えーと……前世で近所のおばさんがたくさん作っていた空き缶風車に少し似ているかな?
ディの説明によると、これは遠風話の魔道具らしい。
どうやら前世でいう電話的な役割りをする道具のようだ。
改めて見直してみると、中の羽には特殊な印、底には魔法陣が書かれている。
へ~、こんな魔道具があるなんて知らなかった。お父さまは使ってるのかしら?
今夜、月が昇る頃に連絡をくれるらしい。
うわあ、楽しみ!
月が昇り始めたら、テラスに出た。
遠風話は、ごく簡単な風の魔法が使われていて、風の吹く外でなければ使えないらしい。そして長距離にも向かないとか。
さらに対でなければ使えないので───性能が良い糸電話みたいな位置付けで考えればいいかしら?ま、道具としては不便な点が多い、と。
なお、屋敷に残っていた老齢の家令によると、遠風話は庶民や魔法学院に通う子供達がよく使っている魔道具だそうだ。
貴族は、鏡を使用した遠話用魔道具があるらしい。かなり高価なものと聞いた。
そっちは固定のテレビ電話ってとこかな?
それにしても、携帯電話的な魔道具がないって、少し意外。思う相手に声を飛ばす魔法も難易度が高いようだし。
軽く調べてみたところ、どうやら遠話は、相手の位置が分からないから作動させるのが難しくなるらしい。距離不明で全方位に魔力を飛ばすと考えれば、確かに納得出来る。GPSみたいなものがあれば、楽だろな~。
せっかく書いた1話と半分ほどのデータが消えた……と泣きそうになったら、消えてませんでした。
よ、良かった~。
でも、なかなか書き溜めができません。王子と避暑地で過ごす話は1話じゃ収まらないから、1日2回更新するつもりだったんですが、無理っぽい~……。




