がっぽがっぽ独り勝ち大儲けはダメなんだって~
動揺の激しかったマシューが元に戻るまで少し時間は掛かったが、その後はリバーシの売り出し時期や万年筆の選定についての話になった。
「リバーシの売り出しは、そんなに先にするの?」
「人生ゲームが売れているので、落ち着くまで待った方がいいでしょう。あまり立て続けにカールトン商会から新商品を出すと、他の商会との関係が微妙になります」
私の結婚もそうだけど、ここも他とのバランスなんだ。出る杭は打たれるって、この世界でも通じるんだなあ……。
「それに万能調味料の件もありますしね」
「あ~、忘れてた」
ルパート閣下が聞いたら、ショックを受けるかしらん。……悲しそうなルパート閣下、ちょっと見てみたいけど。
「来週から、ジョンと詰めに入ります。ほぼ材料は決まったので、後は配合具合と量産体制を整えるだけです」
「ありがと、マシュー」
「それ、僕より父に言ってあげると喜ぶと思います。権利関係の手配でずっと走り回っていますから」
ほえ?権利?
「新技術や新商品は、権利登録が必要ですから。でないと、あっという間に摸倣品が市場に溢れる」
なるほど。特許みたいなのか。
それとも商標権とか著作権とか、そっちに似てるのかしら?商売のことは分からないなあ。てゆーか、そんなのがこの世界にもあるなんて知らなかった。
「その手続きって面倒なの?」
「まあまあ面倒ですね。特にお嬢様の商品は今までにない物ですし。ゲームなんて、今まで権利登録したことないからギルドも混乱したらしいですよ」
ふむふむ、新しいことを広めるには、何ごとも手順が必要ってことなんだね。私一人で暴走しないよう注意しよう。
マシューの帰り際、彼の10才の誕生祝いを渡す。
本当は3日後のお祝いパーティーに行って、そこで渡すつもりだったんだけど、今の私が参加したら迷惑だもんね……。
「え?お嬢様に祝って頂くほどでは……」
「だからわたしに教えてくれなかったの?結構、ショックだったんだけど」
「……10才なんて通過点ですし」
やっぱりこっちの人は誕生日って軽い扱いなんだなあ。
「ま、これからもまだまだマシューの力が必要だからヨロシクってことで!」
「賄賂は必要ないですよ」
笑いながら、それでもマシューは嬉しそうにプレゼントを受け取ってくれた。
ディにお願いして超特急で誂えた礼服だ。これから先、ブルーノについて商談の場に出ることがあると聞いている。勝負服は重要だもんね!




