政略結婚をしなくていい理由
1日おいて、次は領でオリバー兄さまの成人パーティーをする予定だ。
だが、私はそちらに出ないことになった。……それでいいと思う。
というより、オリバー兄さまには迷惑をかけちゃったよね。兄さまが主役なのに、私のことで騒ぎになってしまって。
しょぼくれながら、兄さまの部屋へ謝りに行く。
兄さまはいつもと同じ温かい笑顔で私を抱き上げてくれた。
「アリッサのせいじゃないよ。ちゃんとアリッサを守れなかった周りの責任だ」
「でも……わたしが何も考えず、軽はずみだから……」
「アリッサが考えないといけないのはね、」
兄さまは私を抱っこしたままソファーに腰を下ろす。
「将来、誰のお嫁さんになりたいかってことだよ」
「……貴族が恋愛結婚なんて」
普通は、家同士の利害が絡み合った政略結婚だ。
私がそう返したら、兄さまは優しく目を細めた。
「さすがに街の職人や旅芸人と結婚する!って言い出したら、阻止するさ。ただ、うちは四大公爵の一つだから。もう充分、力は持っている。ぶっちゃけて言えば、末っ子のアリッサが家のために無理して誰かと結婚する必要がないんだよ」
兄さまが私の頭を撫でる。
「アリッサがまだ5才だから父上は何も言わずにいるみたいだけど……お前は賢い。ちゃんと話しておこうか」
私よりやや黄色味の強い金の瞳が私を真っ直ぐに覗き込んだ───。
―――イライザ王妃と母上が魔法学院の同級生で仲が良かった話は知っているね?
王妃様は現国王陛下に嫁ぐことが決まっていて、魔法学院へは我が国に早く馴染むために入学されたんだ。
で、卒業後、間をおかずに結婚されたけど……お子が、なかなか授からなかった。同時期に結婚した母上は、ま、この通り子沢山だ。王妃様は次第に母上とは距離を置かれるようになってしまった。
更に、お子がなかなか出来ないということで、第二夫人を娶るよう周囲からの圧力が高まった。
陛下は、異母兄弟で苦労された方だから、出来れば王妃様お一人を大切にしたかったようだけど……お子が授からないとなればそうはいかないのは、アリッサにも分かると思う。
結局、第二夫人シンシア様を娶られ、その1年後、第一王子マーカス様がお生まれになった。で、その2年後、王妃様は待望のアルフレッド王子をお生みになったけれど……正直な話、王妃様はこの国では弱いお立場だ。国内に後ろ楯となる基盤が何もない。
母上は特に親しい友人だったからだろう、それをとても心配して……それで、アリッサをアルフレッド王子に嫁がせようと考えたんだよ。そうすれば、王妃様には炎龍公爵家が背後につくことになるから。
ただ、父上は四大公爵家が王家と結び付くと権力のバランスが崩れることになるから、あまり良いとは思っていない。また、水龍公爵家と姻戚関係を結ぶことも同様に歓迎していない。
という次第で、アリッサが王子とも水龍公爵の令息とも友達でいたいというなら、炎龍公爵家としては特に問題ないって話だね。
まあ、アリッサはまだ5才だ。
結婚のことは、慌てずにゆっくり考えたらいいよ。
中途半端なので、夕方に残りをUPします。




