避暑地へのお誘い
サンドイッチを食べ終え、デザートのケーキへ。
ふう、空腹がようやく収まった。
「水龍公爵家から、夏至祭の花火は綺麗に見えた?」
アルがふと、思い出したように聞いてきた。
私は頷く。
「花火に近いからか、迫力あってすごかったです。王城なら、もっと近いですか?」
「うん。花火は王城の庭から上げるからね。ただ、真上なせいで見上げていたら首が疲れる……」
「なるほど~。あ、花火を上げるのは、誰ですか?」
「基本的には王宮魔術師。でも、一つ二つ、父上や僕のも混ざってるよ」
「え!アルの花火?!」
それはビックリ。どれだったんだろう……。
アルは照れ臭そうに肩をすくめた。
「僕はまだ下手だから、小さいのをひとつだけ。来年は、アリッサにも分かるよう、大きくて綺麗なのを上げるよ」
「うん!楽しみにしてます!」
いいなー、自分の花火を上げるのって。楽しそう。
ていうか。花火って、魔法じゃないのかしらん?
「それで、水龍公爵家ではまたゲームしたの?」
「今回は、エリオットとディの部屋を見せてもらって」
「……様は取ったんだね」
「壁を感じるから要らないと言われちゃいました。あ!あの……エリオットとは友人です!なんか色々騒ぎになってるみたいですけど、全然、そーゆーのではなくて……!」
忘れてた、アルにも誤解だって言っておかないと!
あわあわ説明していたら、アルは「分かってる」とニコッと笑った。
「エリオットもディも僕も、みんなアリッサの友人だよね」
「です!」
力を入れて返事したら、アルは至極真面目な顔をして頷いた。
「うん。アリッサは、ホントにすぐにいろんな友達が出来るから。だから僕も頑張るんだ」
うわ~、アルのこのヤル気があれば友達100人計画も夢じゃなくなってきたかも!
アルが帰り際に、突然こんなことを言い出した。
「そういえばアリッサ、馬に乗ってみたくない?」
「え、乗りたいです」
「じゃあ、この夏に王家の避暑地においでよ。母上がコーデリア様を誘うって張り切っていたから、一緒に来たらいいよ」
「お、王家の避暑地に行っていいものなんですか?」
「コーデリア様も来るしね」
「そっか……お母さまが行くなら……」
馬は、お父さまが私には危ないといって乗らせてくれないのだ。
むふふ。
アルが一緒ならお父さまも反対出来ない。これは良い機会だわ!
王子、ヤル気満々ですよ~。友達100人作るより難しいミッションに挑戦開始です。




