一緒に悪役……?
サンドイッチに手を伸ばしながら、アルに尋ねる。
「アルは、どのサンドイッチがお好きですか?」
「んー、肉が入ってるサンドイッチかな……」
へえ。やっぱり男の子だなあ。
私は、焼いた鶏肉が挟まれたサンドイッチをアルに手渡す。
「ふふ、アルは肉好きなんですね」
「最近、すぐお腹が減るんだ。だから、味より量重視になってる」
「そういえば、背がだいぶ伸びてますね」
改めて、アルに視線を向けた。
出会ったときは、私よりほんの少しだけ背が高いくらいだったけど、今は明らかに拳三つ分は高い。
うわ、急に伸びすぎじゃない?!しかも、ひょろひょろっと細かったはずなのに、がっしりしてきたような?
……まさかキラキラ王子の腹筋が六つに割れてたりしないよね?
「いいなあ、わたし、あまり伸びなくて。背が低いままだったらどうしよう」
「アリッサは可愛いから、小さくてもいいと思うな」
「え!わたし、かわいくないですよ。悪役な顔じゃないですか」
なにせ悪役令嬢。つり目気味だし、金瞳は虎っぽいと自分では思う。
「悪役って」
ところが、アルは心からおかしそうに笑った。
「アリッサに悪役は無理だよ」
「……悪役です。将来、可愛い女の子をいじめたりするんです」
「そうなの?悪役というわりに、やることが小さいなあ。大体、アリッサは人を虐めるより、他のことに夢中でそんなヒマがない気がするけど」
「うーん……そう、かな……??」
確かに。そんなことに労力を割くより、自分のことで精一杯な感じ……。
でも私、悪役令嬢のはずだし。将来、急に、どうしても、ヒロインを虐めてしまうかも知れない。それとも、私に取り巻きが出来て、その令嬢が虐めるんだろうか?
そういや、さっき、私が虐められたんだっけ。そんな私に取り巻きが出来るかしら……学校へ行って友達が全然出来なかったらどうしよう~。
色々考えていたら、アルがぎゅっと手を握ってくれた。
「でもアリッサが将来、悪役になるなら、僕も一緒に悪役になるよ。二人で世界征服って楽しそうじゃない?」
ありゃ?
今日の王子は、本当にどうしたの?
こんな冗談を言うなんて。




