アナベル姉さまもカッコいい!
パーティーは盛大すぎて、少し覗いただけで私はすぐにテラスへ逃げ出した。
だって、5才の子供よ?
大人で溢れる会場なんて、何も見えないわ。変にうろうろしていたら、ただの障害物にしかならない。息切れもしそうだったし。
朝からろくに食べられなかったから、せめて何か軽食は欲しいなー、どうやって取りに行こう。そんなことを考えていたら。
突然、数人の女児がテラスにやって来て、囲まれた。みんな、私と同じくらいの年齢。
んんん?
お友達になりましょう───て感じではないような。
「はじめまして、アリッサさま」
「はじめまして……」
「大変失礼ながら、今日はアリッサさまに いいたいことがございまして」
「はあ」
名乗りもせずに、いきなり何だろう?
神妙に立ち尽くしていたら、女の子達は一気に喋り始めた。
「アリッサさまは、アルフレッド王子と婚約されるのではないのですか?」
「王妃さまとコーデリアさまとの間でそうお約束されていると ききます」
「なのに、エリオットさまに言いよるって、まだ婚約が公にされてないからってハレンチではありませんか」
「アルフレッド王子がおかわいそうです!」
「エリオットさまは しずかな方だから、迷惑だとおもっていても口になさらないだけだわ!」
へ?な、何の話??
全然予想していなかった話の展開に理解が追い付かず、目を白黒させる。
「ちょ、ちょっと待ってください。アルフレッド殿下とエリオットさまは、あの、お友達で……」
「まあ!話をそらす おつもりですか?!」
「そういうワケでは……」
女の子達の輪がじりじりと狭くなる。
な、なにコレ。
こういうのは、将来、学校でヒロインが遭遇するイベントじゃないの?幼女の悪役令嬢は、関係ないんじゃ……?
どうやって逃げていいか分からず、少しずつ後退る。
すると、そこにアナベル姉さまの鋭い声が響いた。
「わたくしの大事な妹に、多勢に無勢で何をなさっているのかしら?」
「アナベルさま!」
はっと小さなご令嬢達が振り返る。
アナベル姉さまは腰に手を当て、仁王立ちになっていた。目が物騒な光を放っている。
「今日は兄の成人パーティーよ。くだらない騒ぎは止めてくれる?」
「でも、あの…………はい……失礼いたしました…………」
姉さま、すげー。
眼光だけであっという間に引き下がらせちゃった。
これから、姐御って呼ぼう。
たぶん、普通の5才の女の子だったら集団いじめに怯えるところでしょうが、アリッサは中身が子供じゃないのでビビリもしません~。(でも、姉からすれば可愛い妹がいじめられて怯えている図…)




