マシューに怒られた…
「この忙しいときに、何故、新しい仕事を増やすんですか」
基本的には私に全面的味方なマシューが天を仰いだ。
「ごめん……こんな事態になるとは思ってなくて」
「分かっていますよ、お嬢様は感性のまま進んだらいいって僕が言いましたからね。でも、今ですか」
「今なんです。ルパート閣下の熱烈オファーです」
「はあぁぁぁ……」
私だって溜め息をつきたい。兄さまの成人パーティーで大わらわな時に、万能調味料開発なんて。
きちんとした品質のものを作るためには、シェフのジョンを巻き込まなければいけない。パーティー料理の献立で日々奔走しているジョンに、どうやって言い出そう?
もちろん、お父さまやブルーノにだって相談しなくては。ブルーノもパーティーに関する取り寄せあれこれで、いつになくピリピリしてるのに。
ううう、水龍公爵家全員から潤んだ目で懇願されたら、しばらく待ってくださいが言えなかったのよー、分かって……ブルーノ……!
「ひとまず、お嬢様が使った材料をすべて書き出してください。至急、集めます」
「うん」
「それと、商会にも料理人がいますので、ジョンへ持っていく前に、彼と一緒に改良点や分量をある程度固めましょう」
「はい!!」
マシュー、大好き!!
マシューに相談して筋道が立ったので、その夜に恐る恐るお父さまに水龍公爵家での出来事や万能調味料の件を報告した。
お父さまは忙しくなることより、ルパート閣下の弱みを握った!と大喜びである。そんなことを喜ぶなんて……ちょっと情けなくない?
ということで、式典でズルしようとした件などをきっちり咎めておく。いつもは強気なお父さまが目線を逸らしていたので、疚しい自覚はあった模様。
その後、とんでもない事態が判明した。
兄さまの誕生日の数日後に、マシューも10才の誕生日を迎えるという衝撃事実が。
ウソ?!!
マシュー、その話、全然しなかったよ!
どうして言ってくれなかったの……。
こんな直前に知るなんてショック~……マシューは家族だと思っていたのに。
いや、呆然としている場合じゃない。これは私のミスだ。
ここは遠慮なく持てる権力を使いまくって、急いでマシューへのプレゼントを用意しなくちゃ!




