魔法の粉の効力
水龍公爵家の食事は、やや薄味だけど素材の良さを活かした料理が多かったので、魔法の粉は使わずにいた。
が、今朝は双子が興味津々なので、二人のサラダに掛けてあげる。
一口食べて、ディは「んん~っ!」と悶え始め、エリオットは目を限界まで丸くした。
「こ、これは、カールトン商会で売っているのか?!」
「え?売り物じゃないですよ。これは、わたし個人の……うーん、道楽?」
なんて言ったらいいんだろう?
悩んでいたら、真剣な表情のエリオットに肩を掴まれた。
「アリッサ。君は人生ゲームでもそうだが、何故、人気の出そうなアイディアほど世に出さないんだ。商品開発の趣味が聞いて呆れるぞ」
「そ、そう?」
だってこれは、この世界のシェフに対する冒涜かな~って思ったんだもん。
ディにも腕を掴まれた。
「これは、絶対、商品化して!いえ、うちにだけ分けてくれてもいいわ」
あのー……目がギラギラしているんですけど、お嬢さま。
なんだか魔法の粉が、危ない粉に思えてくる……。
エリオットは粉の入った瓶を持ち、急ぎ足で父親のところへ向かった。
「どうした、エリオット」
問い掛けを無視し、ルパート閣下の前にあるサラダに粉を掛ける。
そして、ずいっと閣下に差し出した。
「父上!騙されたと思って一口食べてください!」
「な、なにを……今の粉は一体、なんだ?!」
「いいから、食べる!」
仰け反る相手に、エリオットはフォークで適当に刺した野菜を強引に押し込んだ。
あわわ。
突然のエリオットの暴挙に、そばで控えていた召使い達がおろおろする。シェリー夫人も呆気に取られた顔だ。
不気味な沈黙。
しばらくして咀嚼音が聞こえた。
再び、沈黙。
「……旨い」
美貌の公爵閣下は、呆然と呟いた。
その後?
ええ、大騒ぎになりましたよ。
水龍公爵家の執事からは、涙を流して拝まれるしね。
てワケで屋敷に帰ったら、即、魔法の粉量産計画を立てなきゃ。これ、商売にするつもりじゃなかったのに~……。
以上、水龍公爵家一泊編でした。
そんな訳で今日から1日1回更新に戻ります…。




