私の趣味ってなんだろう?
ふいにドーンとお腹に響く音がして、花火が夜空に美しく花開いた。
「わ、近ーい!!」
ほとんど真上に上がっているように見える。すごい、キレイ!
食事を中断し、クローディアさまとエリオットさまと共に空を見上げる。
色がとても鮮やかで素晴らしい。
前世の花火に負けてない。いや、色変化だけでなく同時に形も複雑に何度も変化していくから、前世以上じゃない?
あ、この花火、魔法も加わっているんだ!
なるほど~。
どういう魔法が使われているのかな?
花火師がいるのなら、ぜひ、話を聞いてみたいね。
豪華な花火を堪能したあと、私はそのまま水龍公爵家でお泊まりだ。
ルパート閣下は渋い顔をしていたが、クローディアさまの渾身のお願いが通り、私・クローディアさま・エリオットさま三人は一緒の部屋で寝ることになった。エリオットさまは少し躊躇っていたけれど、やはり一人除け者は寂しいと思っていたのだろう。はにかみながらも嬉しそうに枕を持ってやって来た。
ちなみに、三人で寝るのは巨大なベッドのある客間である。さすがに観葉植物だらけやトカゲの部屋で客人を寝かすワケにはいかないと判断されたようだ。
「ねえ、アリッサは何か集めているものとか、大事にしているものとかないの?」
ベッドに三人で寝転びながら、おしゃべりをする。
「うーん、そういえば特に集めているものってないですね」
「では、君の趣味はなんだ?」
「えっ……趣味……??えーとえーと、新商品を考えたり、取り寄せる手配をしたり……??」
「趣味か、それは?」
「仕事をしている感覚ではないです……」
あと、魔法の練習も楽しいかな。
でも、改めて考えてみたら、趣味ってゆーには微妙なものばかり?クローディアさまやエリオットさまみたいな立派な(?)趣味じゃない……。
「……なんだか わたし、面白みのない人間ですね」
「いや、まだ5才だろう?普通は今から好きなものを見つけていくものなんじゃないか」
「まあ、アリッサはちょっと普通の5才じゃないけど……というより、ときどき大人じゃないかって感じるわ」
ぎくっ。
い、いや、前世もまだ未成年です!この世界なら大人だけど、前世では大人じゃなかったもーん。……足したら、22になるけどさ。
ん?
だけど、前世でもそんなに趣味っていうのはなかったかも。勉強、勉強ばっかりだったからなあ。ゲームはさせてもらえなかったし、読書って言ってもラノベやマンガを軽く読む程度。何か手作りすることもなかったし、そんなに体を動かすことも好きじゃないし……。
やだ、私、本当に面白みがないわ!
これは、この世界で何か趣味を見つけなきゃ。前世のお父さんみたいに、休日にゴロゴロしてる無趣味なおっちゃんはイヤだわ。
遅くまで三人で色々な話をした。
そして、今後、私はクローディアさまを“ディ”、エリオットさまも敬称無しで呼ぶことになった。
「い、いいんですか?わたし、年下だし……」
「何を言ってるの!親友なのに水臭いわ」
「敬称で呼ばれると、壁を感じるぞ」
でも……この神々しい双子には“様”が似合うんだもの~。




