父の実態を知る
「……ポーリーンを撫でたのか」
ルパート閣下から、珍妙な生き物を見る目で見られました。えーん、その目はちょっと傷付くんですけど……。
クローディアさまは、初めて理解者を得たからだろう、完全に舞い上がっている。くるくる踊っている様は可愛い。
が。
撫でたけど、私、トカゲは飼いませんからね?
ここ、しっかり釘をささなくちゃ。
エリオットさまには、「私の観葉植物も大概だが、ディのトカゲにも動じない君は本当にすごいな」と感心された。そうね、美形双子の思わぬ趣味を知ったら、これから先、どんなものでもドンと来いかも。
テラスで夕食会が始まった。
クローディアさまのトカゲ愛は止まらず、微に入り細に入りポーリーンの生態を説明されたので、私はトカゲ専門家になれる気がする。
そして、あまりにも私がトカゲの話を丁寧に聞きすぎたからだろう。負けじとエリオットさまも観葉植物について熱く語り始めた。端から見たら、熱っぽく愛を語っているのに……愛の先が観葉植物だもんなあ。
アリッサ、なんだか水龍公爵家の将来が心配になってきました。この二人、ちゃんと人間と愛を育めるのかしら。
ルパート閣下がしみじみと宣った。
「お前達は、本当に仲が良いのだな」
「だから、親友だと言ったではないですか!」
クローディアさまがムッと言い返す。
うふ、親友。
ルパート閣下は神秘的な色の瞳で、じっと私を見つめてきた。……いやだ、ドキドキします、あまり見つめないで。
「……アリッサ嬢は父君の色合いを濃く継いでいるが、性格はかなり違うようだ」
確かルパート閣下は、お父さまより5才下と聞いている。これまであまり関わりはなかったって話だけど、どうなんだろ?
「大体、マクシミリアンが私の話を最後まで聞いた記憶がない……」
あああ、それは失礼いたしました。
「父はせっかちですから……」
「公爵家持ち回りの仕事をすぐ私に振ってくるしな」
「ほ、ほんとですか」
「式典でただ立っているのは時間の無駄だと、私の水煙幻影魔法で影武者を作れと言われたこともある」
「……家に帰ったら父を叱ります」
なんだ、それ。恥ずかしいぞ、お父さま!
「父、腹黒ですからねー」
「ああ、腹黒だ」
「話の論点をずらして、煙に巻きますからね。あれこれ言われる前に正論で一気に畳み掛ける方がいいです」
「娘でも容赦がないのか?」
「ありませんよ!常に腹の探り合いです」
「そうか……親は選べないからな。苦労をしたんだな」
あれ?おかしいな。
なんかルパート閣下から同情されちゃった。
それなりにお父さまとは、良好関係なんですけど。




