お祖母さま、いつもは優しいのに…
夏至祭が始まるまでにセオドア兄さまとアナベル姉さまの誕生日があったのだけど、いつもより豪華な食事になった程度だった。久々に家族全員で集まったけど、本当にそれだけ。セオドア兄さまもアナベル姉さまも気にした風はない。
それより、夏至祭のあとにオリバー兄さまの16才の誕生日が来る。貴族は16才が成人だ。そちらの準備の方で、皆が大わらわだった。去年から始めてはいたものの、日が迫って殺気だってきた感じ。
公爵家長男ともなると、盛大になるし、招く人も多くて大変なのだろう。驚いたことに、領と王都の二か所で日を違えてやるらしい。どちらの屋敷の家令達も目が血走ってきて、余計な仕事を増やすと無言の圧力が怖い。
それに衣装。
当日に着るマントに刺繍をするんだって、家族が!!
メインは、オリバー兄さまの婚約者ヘレナさまがほとんど刺しているけど、それでもね、柄がね……信じられないくらい細かくて面積も広くて、私も刺さなきゃいけなくて、気が狂いそうなのよ。
こんな風習を始めたバカは誰?!って叫びたい。
しかも、お祖母さまが容赦ない。
私は別布で何度も練習させられ、ようやく合格をもらったと思ったのに……マントの端っこに小花を刺繍しても一針一針チェックされる。私は刺し方が雑なので、きちんと見る必要があるそうだ。
ええ、ええ、分かっていますとも。
こんな根気のいる作業は私に向いてないんだもーん。
あ~あ、お祖母さまが見張ってなきゃ、メアリーにやってもらうのに。いや、メアリーもちょっと雑かな?メアリーのお母さんは上手なのよね。さすがに下町にこの豪奢なマントは持っていけないけどさ……。
夏至祭では、やはりお父さまは領地のあちこちを巡らなければならないようだ。
一方私は、今年はカールトン領ではなく王都で夏至祭を祝う。
なんと。
水龍公爵家に招かれたのだ。
クローディアさまが、ぜひ一緒に祭を楽しみましょう、と。
お父さま、驚愕。
「ヘ、ヘイスティングス家に招かれるだと……?!」
炎龍公爵家と水龍公爵家の不仲は何代にもわたっていたようで、お祖父さまも慄いていた。まあ、私もこんなにエリオットさまやクローディアさまと仲良くなるとは思ってなかったけどね。人の縁って、不思議よねえ。
ブクマが80件になりました。ありがとうございます!
水龍公爵家訪問の回も、1日2回更新に出来ればいいな…と鋭意執筆中でございます~。それにしても水龍公爵家が絡む話は、書くのが楽しい!




