放し飼いは危険ですか?
帰宅したら、お母さまだけでなくアナベル姉さま、寮から帰ってきたグレイシー姉さままでワクワク状態で王城一泊旅行の話を聞こうと待ち構えていた。
……まだ、5才児なんですけど。
一体、どんな結果を期待してるの?
とりあえず、王子とゲームしてコテンパンに倒しました!と胸を張って報告したら、お母さまは目に見えてガックリしていた。
これ以上落ち込ませるのも悪いので、王子と親友になった件はお母さまに言わなくていいか。
その後は、女四人で夏物衣装を買いに行き、楽しい時間を過ごした。可愛いワンピースを買ったので、これを着るのが楽しみ~。
そして私はお母さま達と別れて商会へ。
フランドールのチーズ輸入に関する王妃さまの紹介の件をブルーノに伝えておく必要がある。
ブルーノは、難しい顔だった。チーズは、ブライト王国にもある。要冷蔵だったり、どこまで売れるか分からないという点ですぐ手を出しにくいみたいだ。
反対にマシューは、一緒に苦労してチーズを取り寄せたので、喜んでくれた。
「フランドールのチーズは、美味しかったですしね。取り引き出来るようにしたいですね」
「良かった。マシューまでシブい顔だったら、落ち込んじゃうところだった~」
私が喜んだら、マシューはニコッと笑った。
「父は公爵閣下派ですが、自分はお嬢様派ですので」
「うふふ、ありがとう!でも、間違ったり、危なそうだったら、しっかり止めてね」
「はい」
マシューは、私の商売の教師でもあるし、相棒でもあると言えよう。
いつか、マシューと各国を回って、新商品の仕入れ開発とか、本当にやりたいなあ。
あ、そうだ。
「そういえば、マシュー。王子、プレゼント喜んでくれたよ。アドバイスありがとう。一生、身に着けるって」
「そうですか。閣下の見解と少し相違があったので心配だったんですが、間違ってなくて安心しました」
「お父さまの見解?」
「娘を持つ父共通の苦悩ですね」
「???」
どういう意味だろう?
マシューは頭の回転が速すぎて、ときどき付いて行けない。眉を寄せて考えていたら、額をぐりぐりされてしまった。
「おでこにシワがつきますよ。お嬢様は考え込まずに突っ走ったらいいんです。ちゃんとフォローしますから」
「んんん?私、考えなしのおバカな子って思ってる?」
「そんな訳ではありませんが。でも、お嬢様は難しく考えずに、直感で行く方が良い結果を出す気がします」
えーと、つまり感性の女ってことかしら。頭脳派なつもりなのに。
「そういえば。もう1つ、マシューに伝えることがあったわ」
大事なことを思い出して、私はメモ帳を取り出した。
「帝国製万年筆、王妃さまから10本、王子から5本、王妃さま付きの侍従長から50本の予約が入ったから」
「えええっ?!まだ工房選定中なのに、 もうそんなに予約を取ってきたんですか?勝手に営業しないで下さい!」
「営業したワケじゃないわよう~。気がつけば独りでに話が転がっていったの」
下手すると、王城中の文官にも話が広がりそうだったので、慌てて止めたくらいだ。
「……これからお嬢様が出掛けるときは、お側に付いておく方がいいかなあ」
「ええ?マシューに飼われているみたいでイヤ」
「お嬢様を飼える剛毅な人なんて、いません」
ちょっと?猛獣扱いは止めてよね。
マシューは王子と面識がないので、アリッサの父と母(たまに商会へやって来る)から聞いた話で色々と判断しています。
アリッサが王子との婚約を回避しようとしていることも薄々、勘付いています。(でも、大きい目でみると王子がいいんじゃないかな~?と思い、一応、王子を応援中)




