大事な二人にプレゼント
テッドには新人式で着る白のシャツを、お祝いとして事前にメアリーに渡している。
なので今日は、リックにプレゼントだ。
箱を渡したら、リックが目を丸くした。
「え?どうして俺に?」
「だって、去年のリックの新人式のときには まだリックと出会っていなかったから」
「てゆーか、俺達にお嬢が新人式のお祝いをする必要なんて、ないんだけど」
私はにんまり笑った。
「大丈夫。ちゃんと下心があるもの!」
「……下心?」
リックがそっと体を引く。
私は笑みを崩さぬまま、リックとテッドを交互に見た。
「私、働きすぎでしょ?だから、いずれリックやテッドにいろいろ手伝ってもらおうと思ってて」
私の台詞に、テッドの方が仰天した。
「ええ?!オレ達じゃ、お嬢の小指くらいしか役に立たないぜ?」
「何いってるのよ。頼りにしてるのに。そこは、どーんと任せろって答えてくれなきゃ」
「ムリムリムリ。ふつーの人間だもん、オレ」
それは、私が普通の人間じゃないってことにならない?失礼だわあ。
リックはその間に箱を開け、中に収まっているナイフを見て驚きの声を上げた。
「これ、アルカスターのナイフだ」
全体の長さは20cmか25cmくらい(こちらの長さでは、1cm=1リム)。片刃で、革のケースもセットになっている。
刃物が名産で有名なのがアルカスター地方だ。鋼の質が良く、丈夫で切れ味が優れていると聞く。
リックは手先が器用で、以前からナイフ一本で小物をささっと作っている姿を見てきた。食材の皮を向いたり切ったりするのも同じナイフだ。わりと日常的に様々な用途で一本のナイフを使い回しているので、プレゼントならナイフだと思ったのだ。なるべく、よく使う物をあげたいもの。
リックはナイフをくるくる回し(私がやったら、絶対に指を切り落とす)、すぐにリンゴの皮を剥き始めた。普段はクールなのに、口の端が少し嬉しそうに上がる。私も嬉しくなる。
その様子を、羨ましそうに眺めているテッド。
私はつい、テッドをヨシヨシした。
「そのうち、テッドにもナイフをプレゼントしようかな~」
「べ、別にオレは要らねーもん」
「わかった、わかった」
「なんだよー、にやにやしながら言うなよー」
なんだかんだ言いながら、この冬の間にリックとテッドは神殿で神官様を手伝って、子供教室を開催してくれていた。私一人では手が足りない計画に、二人はとても大切な人材なのだ。
学習スピードもかなり速い。ホント、素晴らしい人材なのよね……。大事にしないと!




