別荘でのゆるやかな時間
私は今、お父さま・お母さまと一緒にカールトン領の別荘にいる。
王都での3日間に及ぶパーティーが終わるなり、お父さまが「しばらく、休む!!」と宣言したからだ。
……お父さま、ずっと忙しかったもんね。
ということでその間は、お祖父さまが補佐しつつ、セオドア兄さまが火龍公爵代理を務める。領は、オリバー兄さま。
ま、マーカス殿下の立太子の儀が済んだので、当面の間、特に急ぎの仕事はないそうだけど。
でも、私はパーティーのあと、せっかくだからもうちょっと王都にいたかったなー。
パーティーではジョージーナさまたちに会えなかったし、ダライアスさまは地龍公爵位をデリックさまに譲って近い内に領へ引っ込むらしいので、その前にゆっくりお話したかったし。他にもいろいろ、やりたいことがあったんだけど……。
ちなみにゴドフリーお祖父さまたちは、パーティーが終わった翌日の朝には、キャラハン領へ向けて旅立った。
ゾーイ叔母さんからは
「一度、キャラハン領に遊びにおいで!」
とお誘いを受けている。
行けるなら……いつか、行ってみたい。国外旅行は気軽には行けないけれど、国内くらいならねぇ?
もっとも、馬車だとどれくらい日数が掛かるか分からないのが問題……。あと、お母さまいわく、「なーんにも無いところだから。名物は魔物だから」だって。
ほんと、どんな土地なの、キャラハン領!
カールトン家の夏の別荘に来たのは、初めてだ。
いや、実は私が2歳くらいのときにも来ているらしいけど、2歳なんて覚えてない。
さて、お父さまはここに来てから、見たことがないほどリラックスしていた。そして、私に甘々だ。
しょっちゅうベッタリしてきて、うっとおしいこと、この上ない。
「お父さま、ベタベタしすぎ!」
「……アリッサ、父に対して冷たくないか?!」
今日も、私を膝の上に乗せてお茶をしようなんて言うから、とうとう私はキレた。
もうすぐ9歳だよ?
膝の上に乗せるような年じゃないじゃん!
でも、お父さまは私がお祖父さまによく甘えているのが気に食わないらしい。帝国まで一緒に旅をしたのも、悔しいのだとか。
拒絶したら、ものすっごく落ち込んだので、仕方ないから横にくっついてお茶をしてあげた。
面倒だわー。
私、小さい頃、お父さまはあんまり私のことが好きじゃないと思っていたんだけどなぁ。
そのことをお母さまにちらっと話したら、お母さまはおかしそうに笑った。
「マックスはね、アリッサが生まれたときに"うちの子の中で、この子が一番かわいい!"って衝撃を受けたんですって」
「そうなの?」
「そう。でも、他の子たちも可愛いから、この子ばかり特別に可愛がっちゃいけないと自戒していたの」
へええ。
それに、女の子はいつか結婚して家を出るから、距離を取っておかねば!とも思っていたらしい。
そうなんだ~。
まあ……私も別にお父さまのこと、嫌いじゃないのよ?
でもねぇ。
前世の年のことを抜きにしても、もう、親にベッタリする年じゃないもの。今さら添い寝とか、恥ずかしいじゃん。
旅では、お祖父さまと一緒に寝たけどねー。
ゆるやかに夏が過ぎてゆく。
ここにいると、わりとヒマな時間が多い。なので、最近は改めて、前世のことをノートに書き留め始めた。
まず、子供の頃からの出来事を時系列で書いていったら……小学校の3年生と4年生のことは全然、記憶にないことが分かった。
幼稚園や1年生のときのことで思い出せるものがあるのに。
たぶん、他にも、欠落はいっぱいあるんだろうなぁ。
それに、前ははっきり覚えていたことも、この頃は少し薄くなっている。
前世の記憶は、魂の傷だとイーザさんが言っていた。
ということは魂の傷も、きっと自己修復していくに違いない。だからいずれ、古傷が痛むように、ときどきしか思い出せなくなるのだろう。
帝国のライムツァイト村みたいに、前世の記憶持ちの人ばかりで集まっていたら、傷を刺激し合って忘れないのかも知れないけれど。
とりあえず、私がこの世界で便利に生きていくために。
今後、作った方がいいものは、今のうちにリストにしておかないとね!
のんびり出来るこの時間、実は結構貴重かも~!
いろいろと悩んだのですが……アリッサの4才~8才までを『第一部』として、ここで『第一部 完』とさせていただきます。
『第二部』は、この数年後からスタート。何年後になるかは、読んだときのお楽しみで!
なお第二部の前に、一部から二部の間の出来事で書いておいた方がいいかなというものを少しだけ挟みます。
それと。
諸事情により、来週はお休みします。その次の週から再開できるといいんですが……もしかするとちょっと厳しいかも??なるべく早く再開できるよう、がんばります。




