王子の闇
「……君は、やると決めたら必ずやるんだろうね。アリッサ嬢ほど自由な人は見たことがないもの。本当は……王家と……僕と、付き合うのも面倒だったりするのかな」
!
王子の美しい青い瞳が、急に底知れぬ深淵に変わったようだった。言いようのない、深い闇。
ビックリした。
同時に、これは駄目だと思った。
王子を、こんな闇の中に放り出しちゃいけない。咄嗟に私は王子の手を握った。
「殿下も一緒に旅にいきたいなら、いきましょう!兄君がおられるんですもの、まかせちゃいましょう!」
……いやいや、慌てたからって、私、何言ってるの?!
王子に王族の義務を放り出して一緒に旅しましょうって。
でも、まだ6才の子供が、こんな顔をしていいはずがない。王子は、考えてみれば友達もいないのだ。
同腹の兄弟もいない。つまり私みたいに可愛がってくれる姉さまや兄さまもいないってことで。
そんな孤独の中で王族としての義務に雁字搦めになっているなら。
馬鹿な夢の一つくらい、あってもいいのではないだろうか。……王子が本気になって、私と旅に出ちゃったら、私、処刑されそうだけど。
ん?てゆーか、よくよく考えてみれば、王子と婚約しないように最初は策を練っていたはずなのに、最近、迷走してないか私?
まあ、お母さまやお父さまから婚約の話は聞かないから、その話はきっと消えたんだろう。たぶん。そのはず。
なら、王子の友達くらいは大丈夫だよね。ほら、将来、王子が闇堕ちして残虐な王様になる可能性とかも考えられない?それくらい、この底無しの瞳はヤバそうな気がする。
ああ、ゲームの内容が分からないって、こんなとき不便だな……。折っておくべきフラグが全然分からないんだから!
───とりあえず、今の段階での王子の闇堕ちは防いだ、と思う。
王子が繋いだ手をぎゅっと握り返し、晴れやかな満面の笑みになったからだ。
「兄上に全部任せて、君と旅か……うん、それは壮大な夢だな」
子供らしい笑顔が眩しい。
「無鉄砲なアリッサ嬢を守れるように、剣の腕を磨いておくよ」
「無鉄砲じゃありませーん!それに、自分の身くらい、自分で守れます!」
「ふふふ……」
そうだ!
闇堕ち解決法として、早急に、王子の友達をたくさん作っちゃおう。友達がいっぱいいれば、孤独も癒される。出来ればヒロインらしき女の子が分かるなら、そっちとくっ付けたいけど……難しそうだからね。
やることが増えてきたなぁ。頑張らないと!
今週は土日の更新をお休みします……。
休みなしでここまで来ましたが、ちょっと間に合わなくなってきました……。




