王子とまったり
近いうちに、必ず第3回ゲーム大会を実施するのよ!と言い置いて、クローディア様は上機嫌に帰って行った。エリオット様はその横で苦笑していたが、「次は私が勝つから」と再戦意欲満々の台詞を残し、後を追う。
一方、王子のお迎えはまだ来ないので(というより、水龍公爵家のお迎えが少し早かった)、そのまま二人でお茶をする。
人生ゲームのボードを片付けながら、王子は感慨深そうに呟いた。
「予想もしない人生を歩めて、面白かったよ」
「たのしんでもらえて、良かったです」
「次は、僕も冒険者ルートへ進もうかな。魔法学園へ行くのが当たり前のように思っていたけど、もっと人生を楽しんでみないとね?」
言って、ふわりと蕩けそうな笑顔を私に向ける。
え?え、え?!
ろ、6才でその色気ある笑顔は、凶器じゃない?
正面から避けようのない攻撃を食らってしまって、私は思わずドギマギと視線を宙に彷徨わせた。不意討ち、卑怯なり。
私は狼狽えた自分を叱咤し、素知らぬ顔で会話を続けた。
「わたしは、実際の生活でも、冒険にでてみたいです。でも魔物をたおすのは、危険がおおきいので、隊商について行こうかなって」
その前に、他領にあるうちの商会を回ってみるのもいいかも知れないけど。
いつも領と王都は転移陣でポーンと移動するから、馬車の旅って想像がつかないのよね。野宿とか、あるのかしら。前世でもキャンプは経験なくて、ワクワクするわぁ。
「え?それは、本気で考えているの?」
「本気ですよ。夢は大きく!世界一周とかいいですよね」
力強く頷いたら、王子は綺麗な眉をひそめた。
「……公爵家の娘なのに」
「前に商会でお会いしたときも同じようなこと、おっしゃいましたね。でもべつに、わたしは公爵家を継ぐわけじゃないですし。お兄さまもお姉さまもたくさんいるので、わたし一人くらい好きに生きてもよくないですか?……あ、でも、まだ父にはナイショにしてください!」
お父さまにこんなことがバレたら、監禁されそうな気がする。
笑いながら口を塞ぐ真似をしたら、王子はふいに表情を消した。
「……君は、やると決めたら必ずやるんだろうね。アリッサ嬢ほど自由な人は見たことがないもの。本当は……王家と……僕と、付き合うのも面倒だったりするのかな」
今日の夕方、後半部分をUPさせます!




