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お祖父さま、ホントにすごく強い…!!

 航海中、魔物が出た。

 ちょうど甲板に出て、船員さんから船の操縦について話を聞いているときだった。

 マストの上の見張り台で誰かが何か叫び、なんだろ?と思った瞬間には、私はバートに抱きかかえられていた。

 突然の事態に、私は目が点だ。

 でも、真っ青で巨大な細長いもの―――タコかイカの腕?みたいなのが、2本、左舷からにゅっと見えて息を飲む。

 ビックリして叫びかけたら、お祖父さまがいつの間にか左舷にいた。そして空中から槍を取り出し、一気にソレを薙ぎ払う。

 ビュッ!一撃で2本とも切り裂かれ、腕はすぐに海中へ消えた。

 す、すごい。お祖父さま、強っ!

「バート!ここは儂一人で問題ない。アリッサを中へ」

「はい」

 えっ、やだ、お祖父さまの戦うところを見たい!

 でも、そんな抗議をするヒマもなく、ひょいとバートの脇に抱えられる。

 気が付くとバートの右手にも、いつの間にか大剣が握られている。

 私と大剣という、かなりの重量をものともせず、バートはそのまま甲板を走った。船は揺れているのに、足取りはまったく乱れない。

 船員がタイミングを合わせて扉を開けてくれて、私とバートは船室内に入った。

 ……やだ、バートもすごい、カッコいい。

「トムソン!アリッサさまを守れ!」

「へい!」

 いつもとは全然違う厳しい顔付きでバートは指示を出し、私を大柄な船員に渡して、すぐにまた外へ出て行った。そして、あっという間にメアリーを連れて戻って来る。

 メアリーは、私の少し後ろで控えていた。魔物が現れて船が大きく揺れた瞬間、船の柵を持って体を支えたのは見た。そのまま動けなくなっていたのを、バートが助けに行ってくれたらしい。

 メアリーは初めての海の魔物にやや青ざめていたけれど、扉が閉まり、バートから手を離されるなり私に駆け寄ってきた。

「お嬢さま。イーディスさまのお部屋へ参りましょう」

「う、うん」

「バートさま。大旦那さまの応援に行ってください。お嬢さまは私が守ります」

 バートは少し逡巡した様子を見せたけれど、しばらくして頷いた。

「分かった。……トムソンも付いて行け」

「へい」

 船の揺れが大きい。

 私は全然歩くことが出来なくて、トムソンに抱えられてお祖母さまの部屋へ向かった。

 メアリーは、その後ろをしっかりした足取りで付いてきていた。メアリーも……すごい~。


 結局。

 魔物退治は、そのあと、すぐに終わったみたいだった。

 すんごいビックリしたけど……すぐにバートが守ってくれたからかな?私は怖いと感じなかった。

 ていうか!

 お祖父さま、カッコ良すぎる~!!

 何もない空中から槍が出現したよ?

 やだ、もう、前世のファンタジー映画みたい。

 前に領で魔物退治を見たときは、どちらかと言えばクマのような、大きくて獰猛な獣を狩るような感じに思えたけど、今回のは……違うね。迫力がすごかった。

 はぁぁ、海って怖いわぁ。

 いやでも、陸上にもあんな風に巨大で不気味な魔物もいるのかな?

 ブライト王国は王国全体に護りの結界が張られているから、あまり危険な魔物は出ないと聞いている。他の国では、もしかすると、危ない魔物もいるのかも知れない。

 とりあえず、私はお祖父さまを褒め称え、お祖父さまはデレデレしっぱなしだった。

 でも、本当にお祖父さま、カッコ良かった~。

 ちなみにテッドも甲板にいて、残ってお祖父さまとバートの戦いを最後まで見たらしい。

「いやぁ、やっぱ大旦那さまはすげぇ」

としきりに感動していた。


 その後。

 アシャム国へ着くまでに2回、魔物が出た。

 1回は寝ている夜のときだった。それは、バートが退治したらしい。

 大きなクジラのようなやつが襲ってきたらしく、たまたま、起きて外の空気を吸いに出たリックが目撃し、腰を抜かしそうになったと教えてくれた。

 おかげで、「もう、海は勘弁……」が、すっかりリックの口癖だ。トラウマになっちゃったかしら。

 2回目は、私がまた甲板にいるとき。

 船員の一人があの青い腕に捕まって海に引きずりこまれそうになったので……私は咄嗟に、雷の魔法を腕にぶつけてしまった。

 バチッとなって腕は船員を離し―――彼は海の中へ!

 ぎゃーーーっ!

 慌てて今度は風の魔法を繰り出す。

 ゆっくり考える余裕もない。

 船員さんは空へ舞い上がり、偶然、マストに手が掛かったので、彼はそこへ避難することが出来た。

 よ、良かった。

 ただ、すべてが片付いたあと、お祖父さまとバートからは叱ればいいのか褒めればいいのか悩む複雑な顔で……「甲板に出るのは禁止」と言い渡されてしまった。

 うう。

 もっとも船員さんからは、感謝されたけどね!

「いやー、ビックリしたけど、貴重な経験できたッスよ!助けていただきありがとうございました。お嬢さま、すごいッスね!さすがオーガストさまのお孫さまだ!」

 そう?

 私も……いつか、お祖父さまみたいにカッコ良く戦えるようになるかしら?

 あ、あとテッドには「お嬢が戦うのは無し!オレの立場がねぇよ!」と僻まれちゃった。ごめーん。

思いっきり旅の途中ですが……今年はここまで。

来年もまたよろしくお願いします。

みなさま、良いお年を~!

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― 新着の感想 ―
いつも楽しく読んでます! 魔物多いな(笑) もしも、釣りとかしたら魔物とか釣れたりして!? アリッサ様が釣るのがお約束だろうな〜(笑) しかし、タコかイカの腕(もしかしたらべつものか)刺身とかは不…
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