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アシャム国へ向けて出発!

 冬至祭を終え、すぐにアシャム国へ向けて出発となった。

 ちなみにサフィーヤ姫は、学園が休みに入るなりすぐ帰国して兄さまを迎える準備をしているらしい。

 ……帰国するのにカールトン領を通っているそうで、お父さまやお祖父さまはサフィーヤ姫と顔合わせをしたと聞いて、ビックリした。

 カールトン領を通っているなら、屋敷で一泊してもらったら良かったのに!

 でも、まだ正式に婚約した訳ではないから、姫は遠慮したそうだ。

 残念、会ってみたかったなぁ。


 港町リーバルまで、今回は船で。

 贈り物がいろいろとあるので、なかなかの大荷物だ。

 川を下るのは、楽しかった。船首で風を受けているのも気持ちがいい。

 リーバルに着くと、すぐに大型帆船へ。

 船員たちが忙しく行き交うなか、私は胸がいっぱいの気分で立派な帆船を見上げた。

 あああ~、憧れの帆船!前にちょっとだけ乗ったけど、まさか、この船で旅の出来る日が来るなんて!

 バートが待っていて、真っ先に私をエスコートする。

「姫を私の自慢の船で旅にお連れ出来るのは、光栄ですよ」

「ありがとう!」

 飛び跳ねそうになる足を押さえて、淑女らしくしずしずと船に乗る。

 でも慌ただしく出航すると、もう我慢出来なくなって、船首に飛んでいった。

 そんな私を見て、バートが楽しそうに笑う。

「姫は元気ですな。船酔いもなさらないのかな?」

「はい、平気みたいです!」

 リックは酔ってるけど。

 私に付いて船首まで来たテッドとメアリーは、怖々とした仕草で、船縁から海を見下ろす。

「すっげーなぁ。大きな船だと思ったけど、海に出たら、なんか頼りない気がする」

「そうね。それにしても、こんなに大量に水があるなんて!どこから来たのかしら」

 ふふ、海が初めての2人は驚いてばかりだ。

 そのうち、お祖父さまもこちらに来た。

 来るなり、私の首根っこを掴む。

「湾の中はあまり揺れんが、外海に出ると揺れる。あまり甲板には出ず、中にいなさい」

「えぇ?じゃあ、外海に出るまでは、ここで景色を見たいです。……マストにも登ってみたいなー、なんて」

「……アリッサ」

 ありゃ、渋い顔をされてしまった。

 バートが苦笑する。

「ははは、マストに登りたいというご令嬢がいるとは!さすがオーガストさまの血筋」

「うーむ、オリバーもセオドアも、最初は怖がったんじゃがなぁ。こんなに恐れ知らずは、かえって心配になるわ。……いいか、アリッサ。ここでは、ちょっとしたことが命取りになる。絶対に!勝手に一人で船をうろついてはならんぞ?」

 旅に出る前から、お父さまに散々言われたよ。なんなら、普段はうるさくないオリバー兄さまやセオドア兄さまからもね。

 私だって死にたいワケじゃないから、無茶はしません!


 ところが私が元気でいられたのは、湾内だけだった。

 外海に出たら、揺れが激しいのなんの。

 酔わないと思っていたけど、いっぺんに気持ち悪くなってダウンしてしまった。

 うぇ~。

 5分でいいから、揺れを止めてぇ。

 だけど、メアリーとテッドはケロリとしている。

「酔わないの?」

「んー、多少は気持ち悪いけど、そんなに気にならないかな」

「ぶつからないで歩くのは、まだ難しいですけどねぇ。船員さん、すごいですね。こんな揺れの中でも、マストに登ったり、料理をする方もいるんですから!」

 うう、2人のタフさが羨ましい。

 とりあえず横になっていると、気持ち悪さはマシ。

「冬海は、揺れが激しいですから。夏だと、そうでもないんですがね」

 私のために水を持ってきてくれたバートが言う。

 そうか。夏に船旅をしたかったよ……。

「でも、夏に船に乗られたアルフレッド殿下は、姫より酔いが酷かったですよ。姫はやはり火龍家の血かな。船に強そうですね。明日にはもう慣れているでしょう」

「えっ。アルはバートが帝国まで送ったんですか」

「ええ」

「そっかー、アルも船酔いしたんだ……」

「殿下よりも、従者の方がかなり重症でしたね」

 そうなんだ!

 ウィリアムさんって普段は飄々としているから、酔って倒れてる姿は想像出来ないや。

 バートが私の気分転換のためだろう、ベッドの横に座って話を続けてくれる。

「魔力の多い人間は酔いやすいと言われているんですよ。でも、どちらかといえば身体強化の出来る人間が酔いにくいという方が正しい気がします」

 なるほど、だからメアリーやテッドが酔わないのね。

 横で2人も納得した顔をしている。

「魔力が多い少ないに関わらず、火龍家の一族は何故か代々、船酔いしない方が多い。……だからこそ四龍の中で唯一、海に面する南を任されたとも言われています」

「本当に?じゃあ……初代の水龍や地龍や風龍は、船に酔ったのかしら……」

「はは。まあ、これはあくまでも伝説ですから」

 今は、どうなんだろう?

 ディやエリオットは酔うかな?

 ダライアスさまは……船酔いしても、意地でも平気なフリをしそう。

 気になるなぁ。


 翌日には、バートの言う通り平気になっていた。

 ライアン兄さまはまだすっきりしないと言っていたけれど、起きて活動している。

 お祖母さまがまだ酔っていて、お祖父さまが甲斐甲斐しく世話をしているらしい。

 リックは……ダメっぽいね。

「やっぱり留守番が良かった……」

と青い顔で嘆いていた。

 気の毒……だけど、リック、頑張って~!

 私、馬車より動き回れる船旅の方が合ってるみたいだもん。これから先も、機会があるなら船でどんどん他の国に行きたいぞ……?

年内は定例更新します!

年明け1週目のみ、お休みするかも知れません。

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