もうちょっと貴族的振る舞いが出来るようにならないと
アルフレッド王子もお茶会にやって来た。
エリオット様とクローディア様には王子を招くことは事前に伝えているが、実は王子には誰がお茶会に来るかを伝えていない。
素直じゃない王子が、エリオット様達とゲームをするんだな?と察知したら、来ないかも知れないと踏んだからだ。
現れた王子は、予想通り驚いたように目を見張った。
私は急いで駆け寄る。
「おまちしていました、殿下!」
両手をがっしり握って、笑顔全開で歓迎の意を表す。王子が驚いているスキに、勢いで引きずりこまなきゃね!
まさか、こんなに熱烈に歓迎されるとは思ってなかったからだろう、王子は目を丸くしたまま頬に朱をのぼらせる。
私の方は笑顔を絶やさず、王子の手を引っ張って、水龍公爵家の双子の前まで行った。
エリオット様もクローディア様も、少し固い表情だ。お二人とも、王子とは行事で2、3回しか顔を合わせたことがないらしい。
公爵家ともなれば、王家と親しく付き合うものかと思っていたけど……うちのお母さまと王妃さまの関係が特殊だったようだ。側近として仕えることが決まっていれば、幼いうちから一緒に過ごすけど、そうでなければ普通は王家の王子とは挨拶程度の“知り合い”関係なのだとか。
じゃあ、王子って……もしかして友達がいないのかしらん。
まあ、私もつい最近、エリオット様やクローディア様と友達になったところだから偉そうには言えないけど。
「……水龍公爵家のエリオットとクローディアか」
「この茶会にて殿下と同席出来ますこと、光栄に存じます」
「ご尊顔を拝謁でき、大変うれしく思いますわ、殿下」
あれっ。
二人が大人顔負けの手本のような美しい挨拶と仕草で頭を下げるのを見て、私は硬直した。
子供のお茶会でこの挨拶?え?あ、そうか、王子だもんね。
これが、模範的振る舞いだ。
なのに私、さっき、王子に駆け寄って声を掛けちゃったよ。身分が下の者は先に声を掛けちゃダメっていう話を聞いた覚えがある……てか、今までそれをちゃんと守っていたことあったっけ……?
私が固まったからだろう、王子がふっと優しい笑みを浮かべてこちらを見た。
「アリッサ嬢はそのまま、いつも通りでいいのですよ」
……そのまま。いつも通り。
いや、良くないんじゃないかしら。
大人になって恥をかかないためのお茶会だもん。親しき仲にも礼儀あり。次、王子とお茶会のときは気を付けなきゃ!
てゆーか、私、この中で一番精神年齢が年上のはずなのに、負けている気がするのは何故なんだろう?
前世の記憶の庶民感覚が大きいせいなのかなあ……?




