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いろいろと筒抜けになってて、ちょっと怖い

 音楽の授業のあとは昼食だったので、フロヴィンらに誘われて、一緒に食堂へ行った。

 僕の楽器演奏指導は悪くなかったらしい。3人からの僕の評価は高く、一気に打ち解けてくれた。

「殿下、教師の職につけるんじゃないか?すごく分かりやすかった!」

「うんうん、音楽の授業が初めて面白かったよ」

 こんなにも喜んでもらえるなんて、何よりだ。僕も、嗜み程度にしか考えてなかった楽器演奏を楽しいと思えたから、お互い様だけど。

「でも、いいのかい?僕らと組んで……殿下は他の貴族から距離を取られることになるけど」

 フロヴィンが少し心配そうに聞いてきた。僕は軽く肩をすくめる。

「構わない。僕はこの国に勉強をしに来ただけで、帝国貴族と繋がりを作る必要はないから」

 そういや、シンシア様は僕が帝国の貴族と親しくなって、マーカス兄上の脅威になるとは考えなかったのだろうか?

 ま、シンシア様のことだから、そこまで深く考えず、邪魔な僕を遠くへやりたかっただけとは思うけれど。

 親が大工の棟梁だというマークが、食事の手を止め「そういえば……」と口を開いた。

「殿下はいつもどこで食べているんだ?食堂で見かけたことがないな」

「うーん、中庭や空き教室を探して、人のいないところで食べていた……」

 少し歯切れ悪く答えたら、大笑いされた。

「あはは、そっか。大変だよな、ベルティルデ皇女殿下に追いかけ回られて」

 僕が人気のないところを探し回っている理由については明言しなかったのに、すぐ、何故か分かったらしい。

 どうやら僕が皇女に迫られている話は、学内でかなり噂になっているようだ。

 まあ、そりゃそうだろう。あれだけ毎日、彼女が付きまとうんだから。

 マークはうんうんと腕を組んで頷く。

「皇女殿下って見た目は可愛いけど、中身はクセ強いもんなー。尊い身分の人になんだけど、ちょっとアレはきついよな。ていうか、殿下は婚約者探しに帝国へ来たんだろ?でも、皇帝に気に入られてるし、ベルティルデさまに目を付けられたら、もう他はムリじゃないか?」

「えっ、殿下のお相手ってカールトン商会のお嬢さまじゃないの?公爵家のご令嬢と仲が良いって聞いてるけど」

「そうそう、お兄さんと取り合っているんだよねぇ?」

「…………」

 3人の立て続けの言葉に絶句する。

 え?皇帝とのやり取り、知れ渡っているのか?そして、アリッサのことも?

 驚いて固まっていたら、フロヴィンが首を傾げた。

「あれ?違う?」

「いや……その……」

「珍しいものや変わったものを欲しいのは、カールトン家のお姫さまのためかと思ってたんだけど。そうそう、この間、日傘なんかも買っていたよね?」

「……僕の行動は、全部、帝国民に筒抜けなんだろうか」

 怖くなってきて、恐る恐る尋ねる。

 マークがまた爆笑した。

「あはは、こいつらは商人だから。情報に金以上の価値を感じて集めまくっているだけさ。大丈夫、他には、そんなに殿下の私生活は知れ渡っていない」

「“そんなに”ということは、多少は広がっているんだね」

「ま、古い歴史ある国の、麗しの王子サマだし。みな、気になるのは仕方がないだろ?モテる男は大変だな。でも、俺たちを味方に引き入れて正解かもよ?街へ行くときは俺たちで殿下を守ろう。どこへ行って何を買ったか、誰と会ったかは分からないよう、カモフラージュするよ」

 それは……助かる。

 その上、これからはお昼もいつも僕と一緒に食べてくれるらしい。

「一国の王子が、物陰に隠れてひっそり昼食ってのは、可哀相すぎる」

とは、マークの言だ。

 皇女の反感を買うことになっては悪いと思ったが、「ベルティルデさまは、僕んとこの菓子がご贔屓だからね。突撃の際に渡しておけば大丈夫だよ」とリートに言われた。

 お菓子で誤魔化せるかなぁ、あの皇女……。

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