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初めての異国での友人

 帝国学習院で、僕が僕と同じ年齢のクラスで受ける授業の一つに音楽がある。この時間は、あの皇女と離れられるから嬉しい。

 なお僕は、そんなに音楽は得意ではないが、それなりに様々な楽器を弾くことが出来る。母上が音楽好きで、小さい頃から母上の手解きを受けていたからだ。

 ちなみに学習院では、主に竪琴と笛を習うらしい。どちらも、僕は問題なく扱える。

 貴族の面々も、みな、普通に弾けるようだが、平民の生徒たちは学習院で初めて楽器を触る者が多いらしい。ほとんどが下手だ。でも、そんなのは当たり前のことだろう。だからこそ今、教わっているのだと思う。

 しかし……

「あら、また変な音が……」

「誰?間違えたのは?」

 クスクスと意地の悪い囁きが教室に流れる。

 帝国学習院は貴族も平民も平等の教育を!という概念の元、作られた学校と聞く。しかし実際は、学内で帝国貴族が平民を下に見ている場面を何度か目にしている。そして教師も、気付いていても特に注意はしない。

 今回も素知らぬ顔でこんなことを言い出した。

「それでは、何人かで組んで、一つの楽曲を演奏しましょう」

 教師の言葉に、数人が僕のそばに来た。

「アルフレッド殿下。一緒に組みませんか」

「私もぜひ」

「いやいや、ぜひ僕と」

 ……僕も子供っぽいよなぁと思うけれど。

 にっこり笑って、僕は彼らに頭を下げた。

「ありがとう。でも、また次の機会に」

 そして席を立ち、離れたところで固まっている3人のところへ行く。さっき、揶揄されていた平民の生徒たちだ。

 僕を見て、彼らは露骨に胡散臭そうな顔になった。

 僕は気にせず話しかける。

「一緒に組んでくれると嬉しいのだけど」

「……僕ら、ヘタですよ。ヘタな僕らと組んで、上手いところを見せる作戦ですか」

 紺色の髪の子が挑戦的な眼差しで言う。僕は軽く肩をすくめた。

「上手い僕と組んで、上手くなるというのは?」

「……組んだだけで上手くなるわけがない」

「なるよ。僕が教える」

「あなたが?」

「まあ、人に教えるのは初めてだから、上手く教えられるかは分からないけれど。でも、僕の教師は教え方が上手だったから、真似をすれば問題ないと思う」

 3人は顔を見合わせた。

 そして、再び紺色の髪の子が口を開く。さっきより、少し表情が和らいでいる。

「あなたが僕らにそんなことをする利点は何だろう?」

「そうだね……帝国にしかないお勧め商品を教えて欲しいという下心かな。国に、珍しいもの、変わったものを好きな子がいて、その子に贈りたいんだ」

 彼らに声を掛けたのは、帝国貴族のこそこそ陰口が気に入らないというのが一番の理由だけれど……。

 もう一つ、純粋に彼らと仲良くなりたいという欲がある。

 何故なら、彼らのうち、2人は商人なのだ。

 アリッサの喜びそうな帝国独自の変わった品を取り扱っているのではないかと思う。ぜひ、いろいろと教えて欲しい。

 早くアリッサに手紙を書かねば……と思いつつ、どう書けばいいか分からなくて、ずっと悩んでいるのだ。ものすごく面白い品があれば、それを口実に手紙を出せそうな気がする。

 たぶん。

 紺色の髪の子は、ニヤッと笑った。

「分かった。……商人の子として、ブライト王国の王子が僕の店を贔屓にしてくれる可能性を捨てるわけにはいかない。よろしく、アルフレッド殿下。僕はフロヴィン」

「ボクはリートだ」

「俺はマーク。ぜひ、俺たちの最悪な音楽の成績を上げてくれ」

 こうして、僕は初めて異国の友人を得ることとなった―――。

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