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帝国での案内人

 帝国へ着くまでに船は他の国にも寄ったので、僕にはとても良い体験になった。国が違うと、建物も服もこんなに違うのかと発見だらけだ。

 ちなみに一度、嵐にも遭遇した。

 船酔いしない僕もさすがに船酔いをし、死ぬかと何度も思った。

 よく船が沈没しなかったものだ……。海は……本当に怖い。

 ただ、あの嵐を越えてから、ウィリアムは嘘のように船酔いがなくなった。

「いやぁ、吐くものがなくなって、最後は胃を吐くかと思いましたけど……生き残れて良かったですぅ。それにしても船旅って、新鮮な魚が食べられていいですね!今まであまり魚料理は好きじゃなかったけど、好きになりました!」

 現金なやつだなぁ。


 帝国は、我がブライト王国より300年ほどあとに建国された国である。

 あとに出来た国だが、急速にその版図を広げ、国土はブライト王国の5倍くらいはある。

 多民族国家なので港にはさまざまな人々が溢れていた。僕は肌の色が褐色の人や、髪も肌も驚くほど白い人を初めて見た。

 言葉も、帝国語以外が飛び交っている。

 こんな国を統治するって……大変ではないんだろうか。意思疎通だけでも、苦労する。

 なお、バートは帝国語以外もそれなりに話せるようで、港を一緒に回り、珍しい食べ物や飲み物を味わわせてくれた。

 アリッサがいたら、大興奮しただろうなぁ。

 ……そうだ。

 アリッサへの贈り物を買っておいた方がいいかも知れない。

 手紙を―――出さなきゃいけないし。そのときに同封する用に。というか、手紙には何と書こう……?


 港町で過ごすこと3日。

 ライリー・カールトンが僕を迎えに来てくれた。火龍公爵マクシミリアン・カールトンの実弟だ。アリッサの叔父でもある。

 カールトン商会帝国支部の支部長を務めている。

 爵位はなく、平民の身分だそうだ。

 火龍公爵に非常に似た顔立ちだが、やや小柄で、よく日に焼け、とても明るく闊達そうな雰囲気をしている。赤い髪は鮮やかで、火龍公爵よりアリッサの色に近いが、瞳は青だ。

「初めまして、アルフレッド殿下!ライリーです。兄から殿下のお話は伺っておりますが、いやいや、話で聞くより麗しくて聡明そうな方だ!」

 ……火龍公爵、僕のことをどういう風に話しているんだ??

「初めまして、ライリー殿。帝都までの案内、よろしくお願いする」

「どうぞ、ライリーと。……しかし殿下をお待たせすることになって、大変、失礼をいたしました。先日の嵐では島の倉庫も吹っ飛ぶし、僕の船は壊れるし、もう久々の大損害でしたよ」

「ああ……こちらも大揺れで、とても怖い思いをしました」

「そうそう、殿下たちは航海中だったんですよね。まあ、バート様がいるから、大丈夫でしょうけど」

 僕らを襲った嵐はこの近隣の島々にもかなり猛威をふるっていたらしい。

 ライリーは商用で島の一つに赴いていて、嵐の影響をかなり受けたようだ。

「嵐が来るからと、湾の内に船を入れておいたんですけどねぇ。ちゃんと係留していない他の船にぶつかられるとは……」

「ふふ、日頃の行いが悪いせいじゃないか?」

 バートが横からにやりと笑う。ライリーは子供のように口を尖らせた。

「バート様より品行方正ですよ!船は壊れたけど、島の人たちとは仲良くなったし。ちゃんと新たな契約も取れたから、損害分はもう取り戻しました。禍転じて福と為すってね」

「お前は本当にちゃっかりしているなぁ」

「ふっふっふっ。船がダメだと分かったので、積んでいた荷をいち早く島の被災者に配りましたからねぇ」

「この偽善者め」

「いえいえ、状況判断の優れた商売人です、バート様」

 二人は笑いあいながら、互いの肩をぶつける。かなり仲が良さそうだ。

 バートによると、ライリーがまだ10代の頃、バートの元に身を寄せていたことがあるらしい。というより、勝手に転がり込んできたのだとか。

「ライリーさんは、バート様と呼ばれるんですね」

 ウィリアムが二人の関係をどう捉えたらいいのか分からないと不思議そうに首を傾げる。

 ライリーはアハハと大きく笑った。

「僕は早々に身分を捨てましたからね。カールトンの名も要らないって言ったら母に泣かれたので、名はそのまま使っていますが。……でも、バート様の方はこれでも男爵ですし。やっぱり、様は付けておかないと!」

「これでもってなんだ、これでもとは」

「あはは、バート様も要らないと思っているでしょ!……ま、僕はあの父と勝負できるような人は全員、尊敬しますよ。そういう人は全部、様付けですよ。僕なら、武器を持って前に立つだけでもイヤだ~」

 ふうん……。僕の知る火龍家の人たちとは、だいぶ違う。なかなか個性的な人のようだ。

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