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大会終了後

ちょっと更新遅れました。

今回は文字数多めです。

 じりじりとしながら、リバーシ大会が終わるのを待つ。

 アリッサはまだ戻ってこない。

 ようやく決勝戦が終わったときはホッとした。表彰式のときは気もそぞろだ。

 ちなみに第一回リバーシ大会の優勝者は、内務卿のメイソンだった。決勝戦は火龍公爵とメイソンだったが、火龍公爵が精彩を欠いており……メイソンの圧勝となったのだ。


 大会が終わり、諸侯を見送ったあと……兄上と2人で急いで父上の執務室へ行く。

 思った通り、父上にオーウェン団長、四龍が揃って―――いや、風龍公爵がいない。嫌な予感がする。

 だけど、父上は素っ気なく言う。

「……お前たちは、部屋へ戻りなさい。今日はもう疲れただろう」

「せめて何があったか、教えてください」

 いくらなんでも、それはない。

 僕は父上に詰め寄った。

「今は調査中だ。詳しいことが分からない時点で、教えられることがない。部屋へ戻りなさい」

「……!」

 そんな。

 こんな状態で部屋へ戻っても休めるはずがないのに。

 それでも仕方なく執務室を後にする。

「何か情報が入れば、すぐにアルフレッドに連絡する。アルフレッドも、何か分かったら教えてくれ」

「分かりました、兄上」

 ようやく犯人が動いたとしたら、それは僕や兄上、エリオットが計画したからだ(そういえば、エリオットとも話す暇がなかった)。それなのに、何も教えてもらえないなんて……。


 ―――部屋へ戻り、軽い食事をして、ヘザーやブランドンに促されるまま寝る支度をする。

 ベッドに入る頃には、身体が疲れているのを嫌でも実感した。重い。

 だけど、頭は冴えて眠れそうにない。

 そのまま何度も寝返りを打っていたら、小さく扉を叩く音がした。

「殿下。起きていらっしゃいますか」

「ウィル!」

「ああ、やっぱり。起きていると思いました」

 扉が開いて、顔を出したのはウィリアムだ。

「火龍公爵が殿下にお会いしたいと」

「!!……すぐ行く。僕の部屋に通しておいてくれ」


 急いで着替え、寝室の隣の部屋へ。

 厳しい表情の火龍公爵が待っていた。

「遅くに申し訳ない」

「いいえ。こちらへ来ていただいたことに、僕の方が礼を言わないと。……アリッサは無事ですか」

 一番気になっていることを最初に聞いた。

 ふっと公爵は口元を緩める。

「ああ!元気ですよ。そうですね、そのことを大会終了時にお伝えしておかなければならなかった。もう領の方へ戻らせています。大丈夫です」

 そうか。良かった。

「……何があったか、教えてもらえますか」

 全部は教えてもらえないかも知れないけれど。

 しかし、公爵はすぐに頷いた。

「敵は、天恵者を探していたようです」

「え?」

 そこから、火龍公爵は大会時に何があったか簡潔に説明してくれた。

 お茶を持ってきたメイドが天恵者でなければ分からないことを言い、アリッサがそれに反応してしまったこと。そして、そのメイドはすぐに場を去ったが、アリッサは護衛に跡をつけさせたこと。

「結局、途中で見失いましたが……アリッサにつけていた護衛は、特殊な技術を持っていまして。メイドがシンシア様の離宮まで行ったことは突き止めました」

「……シンシアさまの」

「そうです。ゆえにマーカス殿下にお伝えすべきか、四龍の間でも意見が分かれました。そして陛下は、まだ伝える段階ではないというご判断で」

 ちなみに火龍公爵は兄上に言うべきだとの意見だそうだ。王太子の地位を望む以上、向かい合わねばならない問題だ、と。

「まあ、現段階では誰が疑わしいなど、何も判断できませんしね。敵によるこちらの混乱が目的の可能性も考えられます」

 同意見なのは地龍公爵らしい。少し嫌そうにそう教えてくれた。

 反対しているのは、水龍公爵と風龍公爵。

 シンシア様の関わりが可能性として考えられる以上、兄上の行動如何で更なる問題に発展するかも知れない。また兄上の安全のためにも、何も知らない方が良い―――という意見だそうである。

 どちらにせよ兄上は関わってはいないと皆が思っているのは、なんとなくホッとする。僕も、兄上は関係がないと思う。

 火龍公爵は難しい顔をして顎を撫でながら言う。

「陛下はアルフレッド殿下にも何も伝える気はないようで……しかし殿下が一番、この件に心を砕かれています。そのため、私の独断でこちらへ参りました」

「そうなんですね。ありがとうございます」

「ただ。ここから先は、少し四龍にお任せください。この件も内密に。せっかくマーカス殿下とも良好な関係にあるのですから、波風を立てるべきではない。それに留学まで間がないこともあります。御身の安全をまずは考えてください」

「…………」

 留学か。

 ようやく相手の尻尾を掴めそうなのに。本当に最悪のタイミングだ。

「……というか、敵は天恵者を狙っているのですか?」

 王族でも、四龍でもなく?なんのために?

 僕の疑問に、公爵は首を振った。

「私はまだアリッサと話していないので詳細は分からないのです」

「あれ?では……アリッサは、もしかして地龍翁に天恵者の件を打ち明けたのですか?」

「の、ようですよ。あのジジ……失礼、地龍翁にそのことを話すとは予想外でした。そもそも天恵者という言葉を知っていたことにも驚きましたが。いつから知っていたのか……」

「それは恐らく、この間、ウォーレンと話したときではないかと思いますが」

 僕もアリッサやウォーレンに直接聞いた訳ではないけれど。

 一方、公爵は釈然としないようだった。

「ウォーレン殿に天恵者の件を話すというのも解せない。今まで、アリッサを不安定にさせないために天恵について尋ねることはしませんでしたが……そろそろ一度、きちんと話さないといけないのかも知れませんね……」

 そうなのかも。

 僕もウォーレンに聞いてみた方がいいかな……。


 ひとまず、安全のためにアリッサはしばらく王都には近寄らせないということになったらしい。

 火龍公爵は「では、私は明日にでもアリッサと話してきます」と退出した。

 それにしても、敵の狙いが天恵者……?

 その特別な知識を狙わずに殺そうとする意図が分からない。以前、僕とアリッサがモラ湖で狙われたのは別件なのだろうか?

 一歩進んだように見えて、ますます複雑になった気がする……。

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