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アリッサを昼食会に招く

 ウォーレンがアリッサに会いたいと言い出した。この間の件を、謝りたいらしい。

 ウォーレンの気持ちは分かる。けれど、できればアリッサの心を刺激したくない。ウォーレンと顔を合わせることによって、また、精神的に不安定になったら……今度は、そう簡単に戻らないかも知れない。

 僕が躊躇う理由をウォーレンも分かっているのだろう。少しだけ悲しそうに目を伏せて、それ以上は言い募らなかった。

 そして翌日。

 たまたま火龍公爵と会ったので、僕はまだ迷いつつ、ウォーレンが会いたがっている件を相談した。

「ウォーレン殿が?……アリッサは別に気にしていないので謝罪など必要ありませんよ。まあでも、ずっと気にかかっているというなら、会えるよう手配しましょう。どうせ、あの子も王城へ来る用事がありますしね」

 公爵はまったく気にした様子もなく明るく言い切る。

 公爵は、あのときのアリッサを見ていないから、そう簡単にいえるのでは。

 とはいえ、ウォーレンはこの機会を逃すと、僕が留学してアリッサと会えないままになるかも知れない。僕が付き添わねば、ウォーレンは勝手に外部の人間と会うことは出来ないのだから。

 そんな訳で、火龍公爵の手配により母上と僕とアリッサ3人の昼食会が設けられた。

「アリッサちゃんに会えるのは、嬉しいわ!わたくしも、会いたいなと思っていたところなの」

 母上は朝からご機嫌だ。

「コーデリア様とは、お会いになっているのでしょう?たまにアリッサも招けばいいじゃないですか」

「まあ!オバさんのおしゃべりに付き合わせるのも可哀想じゃない」

「……」

 ここで正直に「そうですね」と答えると絶対にまずいだろう。

 僕は返答を避け、「アリッサを迎えに行ってきます」と逃げ出した。

 ―――玄関ホールは、また野次馬な連中がそこかしこに溜まっていた。みな、仕事はどうしているんだか。

 アリッサの方はいつも通り、特に不安そうな様子もない。

 火龍公爵からアリッサを預かり、母上の待つ部屋までエスコートする。

「ね、アル。王城ってウロウロしてる人、多いね」

「普段はあまりいないんだけどね」

「ふうん?」

 アリッサがきょろきょろ周りを眺め、僕らを興味津々に見守っていた連中は慌てて視線を逸らす。

 最近、明らかに僕とアリッサは仲が良いので、いつ婚約話が出るのかと気になって仕方ないんだろう。マーカス兄上が王太子になるのか、アリッサと婚約するなら第二王子の方なのか。

 くだらない関心事だ。


 母上はアリッサが部屋に入るなり、大喜びして抱き着いていた。

「女の子はやっぱりカワイイ」なんて言ってる。

 そりゃ、そうだろ。男を可愛くしようとする母上が間違っているんだから。好きなだけ、アリッサを愛でたらいい。でも今日はウォーレンのために母上の名前を借りただけなので、母上はあまりアリッサと過ごす時間がない。

 僕は少しだけ、ウォーレンを連れて戻るまでの時間を遅くすることにした。


「あ、あの子は……も、ももももう落ち着いて……い、いるの?」

「うん。火龍公爵も、いつも通りだと言っていたよ」

「そ、そう……」

 会いたいと言ったわりに、ウォーレンの方が不安定だ。

「わざわざ言うことでもないけれど……アリッサをこの間のような状態にはしないで欲しい」

「う、うん、わ、わわわ分かって……る……」

 うーん、本当に大丈夫かな?

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