私もいつか旅に出てみたい
商会に改良版人生ゲームを持っていったら、店長の息子さんを紹介された。
そういえば店長のこと、詳しく言ったことなかったっけ。王都店の店長は、ブルーノ・オルコットという子爵だ。
商会を経営する貴族は多いけれど、たぶん、商会に雇われている貴族というのは少ないんじゃないかと思う。しかも、ブルーノは学生時代にお父さまに惚れ、そのときから父の下で働くと決めたらしい。
学院卒業後、すぐに商会へ見習いとして入り、頑張って働いて今や王都店を任せられる店長となった人である。貴族が、平民に混じって見習いから始めるなんて、前代未聞だろう。だけど、商売の基本から叩き上げて上り詰めた分、お父さまの信頼はとてつもなく厚い。
息子のマシューも、いずれカールトン商会で働かせるつもりで、小さいときから隊商に付かせてあちこちの国を回らせたらしい。もはや生粋の商人と言えよう。すごい。
マシューは、今年9才だそうだが、年齢よりも大人びて見える、茶髪茶瞳の穏やかそうな少年だった。
最近、やたら人並み外れた美形を目にしているので、なんだかホッとする。といってもマシューも、それなりに男前だ。前世で同じクラスにいたら、女子からモテたこと間違いない。涼やかな目元なんか、特にカッコいい。が、アルフレッド王子やエリオット様ほどの神々しさはないので、私も肩が凝らずに済む。
そう、美形ってさ……あんまり近くで眺めるもんじゃないと思うんだよね。一緒に並ぶ自分を思うと、イヤになってくるもん。遠くで愛でるくらいがいいなぁ。
世界を巡っているマシューの話は面白かった。私も、いつか、隊商に付いていってみたい。留学もいいけど、隊商の方がもっと異国の文化や生活に密着出来る気がする。それなりに危険も伴うようだけど……護身術もだいぶ身に付いてきたし、魔法も少しずつ使えるようになってきたしね。それなりに身は守れると思うんだ。
マシューの方も、私が持ち込んだ人生ゲームに興味津々だった。
「父から、お嬢様の発想はとても素晴らしいと聞いていましたが……想像以上です」
目を輝かせて、褒めてくれた。
今後も長い付き合いになりそうだから、マシューともどんどん意見交換していかなくちゃね。
そうそう、絵本の原本が出来上がった。春華祭から売り出す予定だ。なかなか可愛い仕上りになっていて、嬉しい。
あとは、長靴を履いた猫のグッズも作らないと。忙しくなるぞ~。




