頑張って文字を覚えます
今度はセオドア兄さまがやってきた。
「アリッサ、最近、礼儀や作法の勉強を始めたって?どうしたんだ、今まで逃げ回っていたのに」
私と同じ金の瞳が、いたずらっぽくキラめく。うう、笑顔が眩しい。
ちなみに、兄は上から順に
・真面目で堅物な頭脳系
・運動が得意で一直線な性格の体育会系
・柔らか笑顔が曲者な暗躍参謀系
と、テンプレな三兄弟で構成されている。そして、真ん中の兄が私と同じ深紅の髪に金瞳。上と下が黒髪に金瞳である。
あ、姉の方は、上が真面目清楚系、次がお色気天真爛漫系(7才だけど!)だ。上の姉は私より明るい赤髪に翠の瞳、下の姉はウェーブした黒髪に翠の瞳である。
こちらも、いかにもな性格の組み合わせだと思う。
「もう兄さまとは、鬼ごっこしたり隠れんぼしたりしてくれないのかな?」
セオドア兄さまが少し悲しげな顔をして、私を覗きこんでくる。
鬼ごっこも隠れんぼも、セオドア兄さまは私に合わせたレベルで遊んでくれたっけ。とても楽しかった覚えはあるんだけど……前世の記憶を取り戻した私は、中身が女子高生なのだ。もう鬼ごっこでキャッキャッするのは難しい。
私は、きりっと兄さまを見返した。
「姉さまから聞いてませんか?ダメな女にならないために、今からがんばることにしたんです。わたしも、兄さまと一緒に歴史や政治の勉強がしたいです」
セオドア兄さまは、当然ながらぽかんとした。そして、あわててオリバー兄さまを呼んできた。
オリバー兄さまにも同じことを言うと、じっと真剣な目で見つめられた。
「本気なんだね、アリッサ?」
「本気です」
「よし。じゃあ、一緒に勉強しよう」
さすが真面目な兄さま。勉強したいという話には、答えが早い。
こうして、うれしいことに二歩目が進んだ。
といっても、まずは兄さま達と並んで、私は文字の勉強から始まったけど。まさか、今さら小学校一年生からやり直しとはねー。
でも、文字さえ読めるようになったら、図書室の本で更なるバージョンアップが望める!