商会回りの次は
アリッサたちとのお茶会から数日後。
今日は水龍公爵家の商会へ行く。エリオットが僕のために店へ来てくれるらしい。
王城から商会までの馬車の中、外をぼんやり眺めながら先日のコマを手の平の上でくるくる回す。ライアン殿にお願いして、譲ってもらったコマだ。だいぶ、綺麗に回せるようになった。
あのとき……アリッサは僕を庇って手を出したけれど、普通、このコマが当たったくらいで、あんなにバチン!と衝撃は来ない。
アリッサは、何か魔法を使ったんだろうか?コマの飛んでくるタイミングで小さく手の平に発動させた魔法。一体、なんの魔法だったんだろう?
そして、あの一瞬で発動させた手際に感心する。
魔力瘤の治療が終わって、その後、小さい魔法から練習していると聞いていたけれど……あれ、小さい魔法というレベルじゃないよな?
ライアン殿もぶつけたコマを自然に、上手に飛ばした。ライアン殿のレベルも並じゃない。
僕ももっと精進しなければ。
ちなみに、マーカス兄上もこのコマをもらっていた。僕以上にムキになって練習しているようである。実は兄弟揃って、負けず嫌いなのかも……?
ヘイスティングス商会で、久しぶりにエリオットと会った。
といっても、エリオットは恐ろしくマメに手紙をくれるので、久しぶりという気がしない。
「アリッサとお茶会をしたのですね」
「うん。でも、何もなかったよ」
エリオットには、毒殺犯を炙り出す目的でお茶会をしたと打ち明けている。静かに彼は頷いて、奥を指した。
「こちらで商品を選ばれても良いのですが、よろしければ奥へ。ぜひ、ゆっくり品を選んで欲しいのです」
店頭で深い話は出来ない。
僕はエリオットに付いて奥の部屋へ向かった。
「ここまでの道中は、大丈夫でしたか?」
奥の部屋で扉を閉めるなり、エリオットが聞いてきた。
「特に何も無し。……僕が狙いじゃないってことかもね。そうなると、打つ手無しだ」
「四龍家の一員として、殿下が標的でなければ安心ですが……かといって、このまま放置する訳にもいきませんね」
「うん。ひとまず、四龍家の商会は全部回るけれど、その後、どうしようか悩むな」
「それでしたら……」
エリオットが珍しくニコッと笑った。
「王城でリバーシ大会はどうですか?」
「リバーシ大会?」
思わぬ提案に、僕は首を傾げた。
確かに王城で何か大きな催しをした方が犯人は動きそうだなとは考えていたけれど……。
「はい。以前、火龍家で盛り上がりましたよね?王城で大会を開催してみれば、という話もありました。悪くないと思うのですが」
「そうだね。悪くない……気がする」
「良かった。いろいろ考えて、案はまとめています。目を通していただけますか」
さっと書類の束が差し出された。
……は、早いな、エリオット。
というか、実はリバーシがしたいだけじゃないのか?
でも、これは有り難い。夏までにもう時間がない。出来ることは、なんでもしておかないと!
 




