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もしかして悪役令嬢 ~たぶん悪役令嬢なので、それっぽいフラグを折っておきます~  作者: もののめ明
アルフレッド視点3

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それぞれの思惑、僕の取るべき道

 僕の留学の件は、シンシア様が言い出したものだと判明した。兄上が教えてくれたのだ。

「すまない。母上は……最近、私とアルフレッドの仲が良いのが気に食わないらしい。距離を取らせようとしているんだ」

 なるほどね。

 その翌日には父上から再度、留学の件を言い含められた。

「以前、王位を継ぐつもりはない、兄を支えると言っていたな?ならば、そのためにこそ、異国の国情や施策を学んできなさい」

 王太子になるつもりはないとまだ母上には打ち明けていないけれど、父上には伝えていた。それを持ち出されると……何も言えない。

 あーあ。

 1年……行くしかないか……。

 ならば、せめて夏までに犯人を捕まえることは……出来ないだろうか?


 半分諦めの気持ちで留学を受け入れかけたが、その話を聞いた母上が怒った。

「1年ですって?!わたくしからアルを1年も取り上げるの?!」

 ブランドンとヘザーも憤慨した。

「第二王子が他国へ留学するなら、普通はもっと前からそういう話がされるものです!こんな直前に決まるなど、信じられない!」

 そもそも限られた護衛しか付けられない異国。安全面の心配があるのに、王位継承権の高い僕を1年も留学させるなど有り得ないと今までにないくらいの怒り方だ。

 で、あちこち情報交換が行われ、シンシア様の発案だと知ると……母上とシンシア様の戦争が勃発した。

 そう。まさか、母上がシンシア様のところまで苦言を呈しに行くとはね……。


「―――アルフレッド。すまないが、イライザに留学は自分の意志だと言ってくれないか」

 父上からまた呼び出され、今度はそんなことを頼まれた。

「……帝国へ行く気はあります。期間がせめて半年なら“自分の意志だ”と言えますが」

「アルフレッド。これはお前のためでもあるのだ。お前が素直に留学を受け入れれば、シンシアもホッジ家も、お前が王太子位を狙っていないと納得してくれる」

 ホッジ家とは、シンシア様のご実家である。

 古い侯爵家ではあるものの、元はさほど権威は強くなかった。しかしシンシア様が第二夫人として王家に嫁いでから徐々に派閥を広げ始め、今や四龍に与さない一派を宮廷に築きつつある。揉め事嫌いな父上にとって、やや頭の痛い親戚なのだ。

 ……どうやら僕の留学は、シンシア様とそのホッジ家が画策して成されたものらしい。

 シンシア様が言ってるだけなら大したことはないけれど、ホッジ家も関わっているなら覆すのは難しそうだ。

「マーカスからも留学期間は3月ほどにしてくれと言われたが、もう、帝国学習院とは話がついている。今さら、変えられんのだ」

「……分かりました」

 これ以上、騒ぎを大きくするのは良くない。おとなしく引き下がろう。

 だけど、父上には言っておきたいことがある。

「ただこれからは、どれだけお膳立てが済んでいても、僕自身に関わることは僕に先に話さずに決定しないでください。もちろん、第二王子としての役割は承知しています。あれもこれも嫌だと我が儘を言うつもりはありません。きちんと話していただけないことが悲しいのです」

「分かった」

 ……どうだろう。たぶん、分かっていないだろうな。

 父上は、第二夫人を娶ることになったときも、母上に事前に言い出せず、火龍公爵に頼んでコーデリア様から伝えさせたそうだ。

 あのとき面と向かって告げてくれれば、フィリップのことをそんな嫌いにはならなかったのに、と母上がポツリと洩らしていた。

 まったく母上の言う通りだ。

 母上とて、第二夫人の必要性は理解している。ちゃんと話してくれれば、素直に受け入れただろう。父上はいつだって……自身がやるべき役目から逃げ回ってばかりいる。


 そろそろ冬至祭を迎えようかという頃。火龍公爵から声を掛けられた。

「殿下。帝国へ留学されるとか」

「ええ、夏から1年行ってきます」

「……王族は10才までに一度は他国を見に行くことは慣例ですが。しかし1年とは。それは殿下のご意志ですか?」

「…………」

 はいと答えた方がいいのは分かっているけど、言葉が出ない。代わりに僕は別のことを聞いた。

「アリッサは、まだこの件を知りませんよね?」

「陛下から先日、聞いたばかりです。意外だったので、殿下と直接話してから娘に伝えようと思っていました。……なるほど、殿下のご意志ではないんですね?では、ホッジ家が動いているという噂は本当か……」

 金の瞳が好戦的な色に光ったので、僕は慌てて手を振った。

「王太子の地位に興味がないということを証明するためにも、行かねばならないのです。僕は受け入れています。……公爵、すみません、アリッサには自分の口から言いたい。あんなことがありましたが……アリッサを王城に招いても宜しいですか」

 アリッサと結婚するためには、越えなければいけない障害がたくさんある。留学によって、僕が王太子になる目が無くなるなら、有り難い話じゃないか。

 ―――火龍公爵は溜め息をついて頷いた。

「殿下のお気持ちは分かりました。早めにアリッサを王城へ連れて来る算段をしましょう。しかし、アルフレッド殿下。今回のようなホッジ家のやり方は国を乱れさせる。安易に受け入れなさるな」

「はい」

 確かに、それはそうだ。

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