返ってくるのが早すぎる
この世界の郵便事情はよく知らない。手紙を書いたら、いつも侍女に渡すだけだからだ。手紙といっても、私が出す相手はアルとディとエリオット―――最近はダライアスさまも加わって、それくらいだけれど。
外国……帝国にいるアルには、どうやって届けられるのかな?と思っていたら、なんと特別に王城から送ってくれるらしい。小さい物質ならすぐ転送ができるそうだ。
帝国には、ちゃんと我が国の領事館みたいなのがあって、ブライト王国とこまめに情報のやり取りをしているんだとか。つまり転送されるのは基本的には重要な書類だ。……て、私の手紙はそれに当たるの?
職権(?)か身分(?)乱用では。
はっ。
もしかして検閲されちゃう?!問題になるようなことは書いてないけど、アル以外に読まれるとしたら恥ずかしい……!
「アリッサの手紙の中が改められることはないよ」
私の手紙を取りに来たお父さまが笑いながら言った。
それは良かった。
……でも、なんだろう。
なんだか手紙の件が大袈裟な扱いになってる。だって、わざわざお父さまが取りに来るんだもん。しかも、めっちゃホッとした顔をしてるし。
私からは連絡しない!って意地を張ってるの、そんなに感じ悪かったのかなぁ?お祖母さまからも手紙を書けと言われちゃうくらいに。
でもさ。
私、最初の頃はアルと仲良くならないようにって行動してたはずなんだよ。それがいつの間にかアルとすごく仲良くなって、手紙が来ないとガッカリするような事態になっちゃってるって……なんでだろう?おかしいなー……。
―――アルからの返信は、なんと4日後に届いた。
早過ぎ~……!
そのうえ帝国の本とか、お菓子とか、可愛い日傘とかが一緒だ。4日でこんなに用意できる?ていうより、同封物も多過ぎ~。
※ ※ ※
親愛なるアリッサ
手紙をありがとう。
帝国へ留学する件、君に伝えなくちゃと思っていたのに、伝えられないまま国を出てしまって……こちらに来てから、ずっと苦しかった。だから君から手紙が来て、うれしかったよ。一番大事な友人を、僕は失わずに済んだんだよね?手紙、本当に本当にありがとう。
君に黙ったまま留学し、手紙もなかなか出せなくて……ごめん。
帝国は版図が広いせいか、帝国内でも異なる文化があって、とても興味深いよ。最初の数日だけでアリッサに話したいことがいっばい出来たくらいだ。王国へ帰ったら、僕は1週間でも君に話し続けられる気がする。
今、僕は帝国学習院というところにいるのだけど、驚いたことに帝国では8才から平民も字や計算を習うんだ!
大抵の貴族も平民と一緒に基礎学習をする。その方が互いに競い合って、学習効果が高いらしい。
ただ、高位貴族は家で基礎学習は終えているので、学習院では別学級で更に高度な内容を学びつつ、一般生徒に読み書きを教えたりするんだ。人に教えることで、知識がきちんと身に付くから、という理由らしい。
あまりにも王国と違うから、毎日が驚きの連続だよ。
正直、留学には乗り気じゃなかったのだけれど、来て良かったと今は思える。帝国のすごいところをたくさん吸収して帰るから、楽しみにしていて欲しい。
他にもアリッサには話したいことがいっぱいあるんだ。食べ物や娯楽で、君が興味を持ちそうなものがいろいろある。直接話せないのは、すごくもどかしいね。
また、近いうちに手紙を書くよ。
追伸
僕もアリッサに一年も会えないのは寂しい。
君も体に気を付けて。
何より、危ないところへは近付かないようにね。
アルフレッド
※ ※ ※
たぶん、書いては破った手紙がいっぱいありそう……




