とうとう大会当日を迎えました
バタバタのうちに、リバーシ大会当日を迎えた。
お父さまはどよーんと暗い顔で朝から王城へ行く。
私が地龍公爵と結託したこともショックだったし、屋敷でグチグチ言ってたらお母さまから「娘たちが火龍としての務めを果たすと言っているのよ?何をグチグチ言ってるの。いくらアルフレッド殿下のご意志とはいえ、火龍が守るべき王族を表に立たせ、自分の娘を隠そうとするのは恥ずかしいわ!」と軽蔑の眼差しを向けられたからだ。
お父さまは食事もノドに通らないほど落ち込んでいた。
ごめんなさい、お父さま。まさかお母さまがこの件でそんなキツいこと言い出すなんて……。
───さて、午前中はリバーシ大会予選だ。
ここで16人まで絞られ、午後に本戦となる。賭けも行われる観覧は、午後の本戦のみ。
私、アナベル姉さま、お母さまの3人は昼食を食べてから、少しゆっくりめに屋敷を出た。
私は午前から王城に行きたかったけれど、それでは敵に不審に思われる、遅れるくらいが向こうをやきもきさせてちょうど良い……というアナベル姉さまの意見に従った。
「それにしても、お母さまが出席を後押ししてくれるとは思わなかったわ」
馬車の中で、アナベル姉さまが言う。お母さまは少し苦い笑みを浮かべた。
「イライザがね……女性を危険な目に遭わせたくないという息子の思いは素晴らしいけれど、危うさも感じられて心配でならないって。彼女の不安は……当然だわ。ならば、その負担を減らすのは四龍の役目ではなくて?私たちが守るのはアルフレッド殿下だけではないの、王妃の心も守らないといけないのよ」
そっか……。この間会ったとき、王妃さまは不安そうな様子はされてなかったけれど……私の提案(リバーシ大会へ招待して欲しいという件)をすぐ受け入れてくれたのは、そのせいだったんだね。
ああ、本当に早くこの件を解決したい。
これで今日は何も起こらなかったら……もう敵は諦めたって考えてもいいのかしら?
王城はかなり賑わっていた。
会場の大広間は大勢の人の熱気に包まれている。
入ってすぐ、会場中央辺りにいたアルと目が合う。
うわ……どうしてこんなに人が多いのに、こっちに気付くの。気付かれる前に、王妃さまのそばへ行っておこうと思っていたのに!
遠目だけど、私を見た瞬間、アルの顔付きが変わったのが分かった。
あれは……怒ってる。怒ってるよ!ど、どうしよー!!
アナベル姉さまの後ろに隠れようとしたら、すっと誰かが私たちの前に来た。
「お待ちしていたよ、勇気ある姫君たち」
「メイジー様!」
後ろにいたお母さまが黄色い歓声を上げた。
「やあ、久しぶりだね。コーディ」
「お久しぶりです、メイジー様。ああ、どうしましょう。お会いできて、うれしいですわ」
風龍公爵、メイジー・アシュベリー卿!
アナベル姉さまの口と目がポカンと開いたのが見えた。私も思わず息を飲む。
お母さまから「とっても!とっっってもカッコいい方なの!!」と聞いていたけれど。
うわわ、本当にカッコいい!というか、麗しい!!
え?え??50代ってホント?!30代の間違いじゃないの??
「ふふ、昔と変わらず喜んでくれてありがとう。だけど、私も年を経っただろう?もう、君にそんな称賛の眼差しを向けてもらえる価値はないと思うんだけどね」
「何を仰られるんですか。年齢を重ねて、ますますメイジー様の艶が増したようですわ!」
「ははっ!嬉しいことを言ってくれる。だが、それくらいにしておいてくれ。私はいつ、マクシミリアンに刺されるか、戦々恐々としているんだ」
目を潤ませた完全に乙女なお母さまと楽しげに会話したあと、風龍公爵は私とアナベル姉さまに向き直り、優雅に一礼した。
「初めてお目にかかる。風龍家のメイジー・アシュベリーと申す。……姫君方を王妃陛下の元へご案内する栄誉を、私めに与えて頂けますか」
「は……はい……」
姉さまがポ~ッとした声音で返事する。
風龍公爵は、地龍公爵と協力して私とアナベル姉さま、ディがリバーシ大会を観覧できるよう働きかけてくれたと聞いている。私は感謝の気持ちを込めて深く礼をした。
「風龍公爵。アリッサ・カールトンです。……このたびは、強引なお願いにご協力いただき、ありがとうございました」
「いや」
風龍公爵の深碧色の瞳が楽しげに煌めいて細まる。
「貴女たちの四龍としての覚悟、心意気に私も深く共感した。ぜひ、共に敵に立ち向かわせて欲しい」
「はい!」
きゃあ、ものすごく心強い味方が出来たかも~。
うーん、本戦?本選?
予選の対義語は本選だと思うんですが、ここは内容的に本戦で。
 




