あっちこっちでいろいろ、お話
結局、アルと二人で昼食となった。
ウィリアムさんも席についてくれたので、アルの小さいときの話をいろいろ聞かせてもらえることとなり、楽しかった。……アルは嫌そうな顔をしていたけれどね。
そのあと、学院から帰ってきたマーカス殿下とリバーシ大会の話をする。
参加者は、かなり多いそうだ。
「リバーシの盤をどれくらい用意すればいいか、難しいところだな」
マーカス殿下が困ったように言うので、私は首を傾げた。
「恒例行事になるかどうか分からないですし、リバーシを持っている家は、それを持ってくるようお願いしたらどうですか?」
「持ってきて……もらう?」
リバーシの独占権は、去年のうちに手放している。すると、うちで発売していたものより豪華なリバーシがあちこちで売られるようになった。
盤に驚くほど凝った彫刻が施されていたり、貴重な石を使っていたり。そういうのを持ってる人は、ぜひとも見せびらかしたいことだろう。
「なるほど。良い案だな」
前世では考えられないほど高級品なリバーシだから、持ってくる従者や王城の衛兵はめちゃくちゃ気を使うだろうけどね……。
その他、いくつか話をして王城を辞する。
屋敷に帰ると───地龍公爵からの手紙が届いていた。
「な、な、何故……あのジジイからアリッサに手紙が……!」
私と一緒に帰宅したお父さまが、驚愕のあまり真っ青になってよろめく。
「だって、お店を見せてくれるって約束したから。それに、いつか領地の工房も案内してくれるんだって」
「は?!はああっ?!!い、いつの間に……ジジイと話をして、そんな……約束を……」
「ジジイなんてダメだよ、お父さま。四龍の最長老なんだから敬わないと」
私のごく常識的な指摘など耳に入らない様子で、お父さまはふらふらと自室へ入って行った。
……お父さま、地龍公爵のこと嫌いすぎない?
翌日。
「行くなぁぁっ!」
と叫ぶお父さまを尻目に、地龍公爵の商会に向かう。今日の護衛は、テッドとガイだ。
「地龍公爵のお店は、武器や防具なのよ。テッド、欲しいものがあったら買ってあげるから言ってね!」
「いらねーって。ちゃんと給金貯めてるんだし、自分で買う」
「いやいや、テッドはまだ背も伸びるし、力も強くなる。ラヴクラフト商会の武器を買うのは早いよ」
ガイが横から口を挟む。
「えー?使い慣れるためにも普段からいいもの使っていた方が良くない?」
「お嬢さま、ラヴクラフト商会の武器は一流品っスよ?数年後には合わなくなるのが分かってて買うのは勿体ない!」
むむむ……その通りではあるけれど、危ない仕事だし、武器も防具もいいものを持っていて欲しい……。
「公爵家からの支給品も良い品質っスよ。それと……一人前になって、扱いの得意な武器を自分の稼ぎで買う。これ、男の夢っスからね。お嬢さま、邪魔はダメだ」
テッドもうんうん頷いているし、男の夢とか言われると反対できない。
ちぇっ。お世話になってるテッドに、カッコいい武器をプレゼントしたかったのに!
「よく来たな。まあ、じっくり見て行くと良い」
見事な仏頂面で地龍公爵は迎えてくれた。だけどその目は案外、優しい。
重厚な店内は、ズラリと武器や防具が並んでいる。
おおお、すごい……めっちゃカッコいい。テッドとガイも興奮を隠せない。
「私……扱えないですけど、どれも欲しいです。すっごくカッコいい~!」
「飾るための物ではないぞ。使えない者には売らん」
「そうですよねー。でも、カッコいいなぁ。ムダがなくて、洗練された形ばかり。すごくシンプルで、武器なのにキレイな芸術品みたいに見えます」
地龍公爵の後ろの店員さんがうんうんと嬉しそうに頷く。
公爵の方はふん!と鼻を鳴らした。
「一番使いやすい形を追求すれば、シンプルで美しい形に行き着くものなのだ。……しかしな。おなごがあまり、武器に目をキラキラさせるのはどうかと思うぞ」
「男女差別反対!女性の騎士もいますし、そういう見方は良くないと思います。それに私、火龍家の人間ですから。何かあったら、ちゃんと戦います」
ククク……と公爵が笑った。
あ、バカにしてる。
「良い覚悟だ。だが、おぬしは戦いには向いておらんな。後方支援で頑張れ」
……うん、まあ、すぐパニック起こしそうな予感はあるけども。
でも体も鍛えているし、魔法も使える方だし、少しは役立つはず……。
「ま、とりあえず奥へ入りなさい。茶でも用意しよう」
「ありがとうございます」
今日も更新時間がいつもより遅れました…。
寒いせいかな~、頭の回りが悪いんですよねー(と言い訳をする)。
今週は木・土と更新します。来週は少し立て込んでいるため、火・土の2回更新で。
 




