ウォーレンさんのせいではないような?
更新時間が遅れて、すみません~。
第2回リバーシ大会会議。
の、前に。
ウォーレンさんが私に会いたいとのことで、王城での昼食会に招かれた。表向きは、アルと王妃さまと私の3人だ。
今回も公式訪問なので、玄関ホールには貴族のオジさまたちの姿がある。
私を見てこそこそ話をするって、ホント、感じ悪~い。
───アルにエスコートされて応接室へ着くと、王妃さまが笑顔で迎えてくれた。
「アリッサちゃんに会えてうれしいわ」
「私もです、王妃さま」
ぎゅっと抱きしめてくれたので、私も抱きつく。
「ん~、やっぱり女のコはいいわね!アルったら、すっかりゴツゴツしちゃって。そもそも抱きしめさせてくれないし。全然、可愛くなくなっちゃった」
男の子だから、それは仕方ないのでは。
「では、僕はウォーレンを迎えに行ってきます」
可愛くないと言われたアルは、気にする風もなく肩をすくめて部屋を出て行く。
ウォーレンさんは、基本的に隠者の塔から出てはいけないことになっている。なので、こっそり裏道を使ってこちらへ来るらしい。
王城って……表の部分だけでも迷路みたいなのに、隠し通路とか、アルはよく覚えているなぁ。
「ほーら。あの子ったら、顔色も変えなかったでしょ。近頃は何を考えているのか、もう、さっぱり」
ほう……と王妃さまは悲しげだ。
「でも、アルはすごく頼りになりますよ」
「そう?」
王妃さまは少しだけ口を尖らせて、拗ねた顔をする。子供がいるとは思えない可愛い雰囲気だ。
王妃さまは───アルが親離れしたようで、寂しいのかしら。
……王妃さまといろいろ話しているうちに、アルがウォーレンさんと戻ってきた。
私に向かってニッコリ笑い、王妃さまはすぐ退出される。
今日はウォーレンに譲るから、今度、ゆっくりコーディも交えて女だけの食事会をしましょうね!と約束させられている。帰ったら、お母さまに伝えておかねばならない。
一方、フードを深く被ったウォーレンさんはいつも以上に挙動不審だった。
人払いしたあと、アルは少し離れたところに座り、私とウォーレンさんの間に防音の魔石が置かれる。
「……こ、ここここの間は……ご、ごめん……」
「いえ、こちらこそ。あんな風に取り乱すとは思ってもいなくて」
「て、天恵者は……せ、精神、的に……ふ、ふふふ不安定に、な、なりやすいと……し、知っていた……のに……」
「あー……でも、私、思い出してから年数が経っているのに、今さら不安定になる方が変というか……」
「ぼ、ぼぼぼ僕が……いろいろ……き、聞いたせい、だ……から……」
そうだろうか?
でも……考えてみれば、ずっと周りには隠してて……初めて人に前世のことをたくさん話したんだっけ。そっか。切っ掛けにはなったのかなぁ。
「まあ、ちょっと動揺しましたけど、もう大丈夫です。私はこの世界で生きていて、アリッサなんだって実感できるようになりましたから。……ありがとうございました」
ウォーレンさんが灰色の瞳を大きく見開いた。
「お、おおおお礼を……い、言われる……ことは、し、してない……」
「いいえ。知らないことをたくさん教えてもらえたし、前世の話を聞いてくれてうれしかったです。忘れかけていたことをいっぱい思い出せて、今の自分を見直す良い機会になりました」
「き、君は……前向きで、す、すごい……ね……」
そんなことはないと思う。
私より、アナベル姉さまの方が絶対に前向きで超ポジティブ人間だ。私も姉さまみたいな強さが欲しい。
「あ!ところで、アルには話していないんですか?ウォーレンさんと天恵者の話をした件」
アルから何も言われないし、今日も防音の魔石を置くことになんのリアクションもない。
「う、うん。アルから……な、何も……き、聞かれてない、から……い、言ってない……」
そうなんだ。意外な気分。
まあでも……私が天恵者だってお父さまは知ってて知らない顔をしているみたいだし、アルも知ってる気がするんだよね……。また混乱したら大変だから、気を使ってくれてるのかしら。
「い、言った方が……いい?た、たぶん、ア、アルは……き、君が天恵者だと……し、しし知っていると……思うけど……」
「うーん……もしかしたら、アルは私が自分から打ち明けるのを待っているのかも知れないですよね……。それなら、もう少し気持ちを整理して、そのあとで話すことにします」
だって。
改めて考えてみるとね?私、ずっと自分が乙ゲーの悪役令嬢だと思っていたのよね。でも、転生者はあちこちにいるらしいし、地球以外の星?か、別の世界の転生者もいるっぽいワケでしょ。どうも乙女ゲームじゃない可能性が考えられる……。
となると、思い出して最初の頃、アルにかなり失礼なことをした理由を……どう説明すればいいのか、悩んじゃうのよ……。乙女ゲームやら悪役令嬢やら、婚約破棄やら。冷静に考えてみれば、あまりに荒唐無稽すぎない?私の前世の世界はどんな世界だと思われそう。
とりあえず今はバタバタしているから、あとで落ち着いて、ゆっくり考えた方がいい気がする……。
ウォーレンさんは頷き、「じゃ、じゃあ……ぼ、僕は……こ、これで……」と立ち上がりかけた。
「え?あれ?お昼ご飯を一緒に食べるんじゃないんですか?」
「ぼ、ぼぼぼ僕が?!」
珍しく大きな声を出して、ウォーレンさんが固まる。
え?謝るためだけに来てくれたの?
「王妃さまは退出されましたし。アルと二人でもいいですけど、せっかくだからウォーレンさんとも一緒したいです」
「ぼ、ぼ僕は、き、ききき君や、ア、アルと……一緒に……テ、テーブルに、つ、つけるような、に、人間じゃ、な、ない」
「公には王妃さまとアルと私の3人ということになってるから構わないのでは?……あ、そっか、ウォーレンさんは私のこと、まだ許してないですよね……」
忘れてたよ。ラクの件で、ウォーレンさんの信用はなくしているんだった。
「……ち、違う。ぼ、ぼぼぼ僕は……僕の……方こそ、き、君から……し、信用される、し、資格は……な、ないんだ……」
「どうしてですか?ウォーレンさんはアルを守ってて、私なんかより……ずっと、王家の信用が厚いと思いますけど」
ウォーレンさんが苦しそうな顔になった。
「…………き、君は、ぼ、僕を……知らない。ぼ、ぼぼぼ僕は……闇魔法の……つ、使い手だ……」
「……それが?ラクと比べたら、全然、信用できることですけど?」
「………………」
何か呟いたようだったけれど、私には聞こえなかった。
ウォーレンさんはほろ苦い笑みを浮かべ、防音を解除し……アルに頭を下げてすぐに部屋を出て行ってしまった。
うーん……なんて言ったのか、気になるよ!!
 




