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もしかして悪役令嬢 ~たぶん悪役令嬢なので、それっぽいフラグを折っておきます~  作者: もののめ明
アリッサ7才

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なんだか急に忙しくなってきました

 読書感想文大会の件、翌日にお祖父さまとオリバー兄さまに話した。領内のことはお父さまではなく、お祖父さまの仕事だ。

「読書……感想文?」

「へえ。面白そうな試みだね」

 お祖父さまは意味不明という顔になったが、オリバー兄さまはすぐに頷いてくれた。

「実は一度、神殿での勉強会を見に行こうと思っていたんだ。近いうちに、アリッサ、一緒に行ってくれるかい?」

「兄さまが神殿に?」

「屋敷の下働きの者たちにもね。きちんと読み書き、計算を身につけさせようかと考えていて。神殿の教室のやり方を見習おうかと」

 兄さまがそんなことを考えていたなんて、知らなかった。

 お祖父さまも初耳だったのだろう、詳しく話せと目で兄さまに問う。

「アリッサのおかげでうちは商売も順調でしょう?領と王都間で物資のやり取りも多い。荷札は、間違いを無くすために皆が読める方がいいんですよ。それと王都の店は、裏方でもそれなりにしっかりした者でないと働かせられない。今のように紹介で雇うだけでは、いずれ間に合わなくなります。領で人材を育てていかなければ」

 なるほど!確かに、庶民で読み書きのできる者を探すとなると大変だろう。どこかにいるのを探すより、自領で育ててゆく方法を確立させた方が、長い目で見れば良いに違いない。

「なにせアリッサの育てたリックがとても優秀ですからね。良い見本でしょう、お祖父さま?」

「ああ……そういえばテッドも読み書き計算が出来て優秀だな。騎士のなかには、剣技だけ磨いて勉学に身を入れてなかった者も多い。ちと、問題だと思っておったのだ。ふうむ。この際、騎士どもも一緒に勉強をさせるか?」

 うわぁ……リックとテッドが評価されている!

 うれしい!!そうでしょ、そうでしょ。私の友人は優秀なのよ!


 そんなこんなでお祖父さまと兄さまは神殿教室の視察と、今後、屋敷で定期的に勉強会を開催する件について話し合いを始めた。

 ていうか、騎士は貴族階級の人が多いって話なのに、テッドより読み書き計算が出来ないなんて。

 情けない話だよねー……。


 お祖父さまとの話のあと、お父さまに呼ばれた。

 お父さまは春華祭の神事が終わったので、明日には王都へ戻る予定だ。

「アリッサ。あの少年の印、消せたそうだな」

「はい」

 そうそう。この件でお父さまにお願いしたいことがあったんだった。

「えっと……それで一度、ウォーレンさんと話をしたいので、王城へ行きたいんですけど……」

「ウォーレン殿と?……分かった、アルフレッド殿下に話を通しておこう。それと」

 スッと手を上げる。

 いつの間にか、お父さまの横に痩身の黒尽くめの男の人が立っていた。特徴のない顔をしていて、恐ろしく気配がない。

「この冬の間、お前とアナベルにはずっと当家の影を付けていたが……結局、不審な動きはなくてな」

「はい」

 前にお父さまへ護衛計画書を出したとき、カールトン家の影を付けて欲しいともお願いしていた。影の仕事は、私やアナベル姉さまを守るのではなく、周囲での動きを探ることだ。

 ……うーん、何も釣れなかったのか。残念。

 やっぱり、もっとあっちこっち出歩くべきだったんじゃないかなぁ?お父さま、用心しすぎなんだもん。

 それにしても……我が家の影には初めて会った。

 すごいなぁ、護衛の人とは全然、雰囲気が違うね。強そうにも見えない。

「それで……アルフレッド殿下からのご提案なんだが。王城でリバーシ大会を開くことになった。アリッサとアルフレッド殿下、マーカス殿下の3人が中心となって、企画してもらっていいか?」

「ふえっ?!」

 影の話から、飛びすぎ。何故、リバーシ大会?

「アルフレッド殿下がどうしても早急に片を付けたいと仰られてな。お茶会ではなく、マーカス殿下の誕生日パーティーと同じような大々的な催しを開くべきだと……」

 お父さまの顔には「イヤだ」とはっきり書かれている。でも、アルが強く言って断れなかったようだ。

「殿下は、アリッサは絶対に守ると言うし……アナベルはアナベルで学院には屋敷から通うよう言ったのに寮へ戻ると言ってきかないし……」

 はあ、と大きな溜め息をつかれてしまった。

 溜め息をついて恨めしそうな目で見られても……それ、どっちも私が言ったんじゃないよ?

「だがまあ、現状、このままでは埒が明かないのは事実だ。心配だが、殿下のご提案を受け入れることにした。そこで、王城への護衛は今までリックに行かせていたが、この件が解決するまで影の……イアンにさせる」

「……はい」

 王城にはさすがに影は入れない。

 だけど、リックより熟練の護衛に変えるというのでなく、影を付けるなんて。

 影は、もちろん護衛も出来るけれど、どちらかといえば諜報任務の方が主だ。どうして影なんだろう?

「アリッサ様。イアンと申します。護衛のときはこの姿とは少し違うものになると思いますが……よろしくお願いします」

「イアンは……王城内の様子を探らせるためにお前に付ける。このことは、決して殿下には洩らさないように」

 え。

「アルを疑ってるんですか、お父さま」

「いや、殿下を疑っている訳ではないよ。だが、王城内のことは四龍家も立ち入れないだろう?こちらの視点で中を知っておきたいんだ」

 なるほど。でも……い、いいのかしら。お父さまは謀叛とかしないけど、王家をこそこそ探るって、バレたらヤバイんじゃ?

 お父さまは真剣な目で私を真っ直ぐに見据えた。

「護衛は一人しか付けられない。つまり、イアンが周囲を探る間、お前の護衛が少し弱くなるということだ。アルフレッド殿下の守りを信じてこその選択だが……アリッサ自身も注意をしなさい」

「……分かりました」

 そっかぁ。心配性のお父さまにしてはすごい決断をしたのね。

 どう注意すればいいか、難しいところだけど……うん、気を引き締めて頑張ります。

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