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もしかして悪役令嬢 ~たぶん悪役令嬢なので、それっぽいフラグを折っておきます~  作者: もののめ明
アリッサ7才

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ちょっと痛かったけど、手袋をもらいました~

「風の魔法?」

「はい。これを風の魔法で回転させるんですが……」

 ライアン兄さまが手の平に置いた物をほんの少し浮かせてクルクルと回し始める。

「アリッサが考えたものなんです。これをぶつけあい、弾き飛ばされたら負けって遊びなんですよ。今、商品化に向けていろいろ試しているんですが、兄たちは強すぎて、参考にならないんですよね。少しご協力いただけますか?」

「面白そうだな!」

 マーカス殿下もアルも、興味津々な様子で兄さまの手元を覗きこむ。

 アナベル姉さまが不審な顔で私を見た。事前に姉さまには言ってなかったので、後でいろいろ聞かれそうだ。

 でも、アルから手袋を賜る件、お父さまに話したら「そんな簡単な話じゃない!」と慌てられ、細工が必要となり……準備にギリギリまで掛かったので仕方ない。

 そもそも姉さまにはラクによる手の印はナイショにしてるしね。

 ───マーカス殿下とアルが兄さまからコマを受け取る。

 そう。

 兄さまが手の上で回しているのは小さいコマだ。金属で作っている。

 ベーゴマって言うんだっけ?

 私は前世で遊ぶどころか触ったこともないからよく分からないのだけど。まあ、たぶん、それに似たようなものであることは間違いない。男の子が喜んで遊びそうで、魔法で動かせそうなオモチャとして思い付いたのだ。

「む……、これは難しいな。上手く回転しない」

 マーカス殿下がコロン、コロンとコマを転がしながら呟く。

 兄さまは肩をすくめた。

「やっぱりそうですか。学院で魔法を習い始めた学生向けの商品にするつもりなんですけど、難易度が高いかなぁ」

「……回った」

 アルがスッと手を上げる。少し軸がブレているけれど、コマは自立して回っている。

「はあ……。魔法の扱いはアルフレッドの方が巧みだな」

「少し練習すれば、兄上もすぐにできるようになると思いますよ。……それで、これをどうするんだ?」

 実はさっき私と練習したアルは、素知らぬ顔でにっこり笑い、兄さまに尋ねる。

 兄さまもコマを回している手を上げた。

「これをぶつけ合います。合図しますので、同時に宙へ放り投げてください」

「分かった」

 アルが頷き、兄さまが「3、2、1、それ!」とコマを投げた。アルも合わせて投げる。

 コマはぶつかり……バチンと弾けてアルの方へ飛んだ。

 ライアン兄さまがこっそり軌道修正をしてるんだけど、狙いがピッタリですごい!

 私は「あぶない!」と急いでアルの前に左手を出した。左手には周囲に分からないほど小さな雷の魔法をまとわせている。ぶつかった衝撃で軽い火花が出るはず……。

 バチン!

「いっ……たぁぁぁ!」

 ぎゃーーー!

 予想外に痛いっ!!


「アリッサ嬢!……すぐに王宮医を!」

「ま、待ってください!だ、大丈夫です!!」

 痛い。涙目になる……でも、マーカス殿下、王宮医を呼ばないで~。そのための細工だから!

「ライアン兄さまが……アルフレッド殿下を攻撃したと……取られては困ります。それに、わ、私の考えたオモチャですので……」

「いや、これは不慮の事故だ、私がそう証言するから……」

 マーカス殿下が申し訳ないくらい慌てている。周囲の侍女たちも真っ青だ。あ、アルも顔色が悪くなってる。

「大丈夫、です!ほら、ちょっと赤くなっただけで!もう痛くないですから!……お願いです、王宮医を呼ぶとどうしても記録は残りますよね?父にバレると兄さまも私もめちゃくちゃ怒られるんですー、大ごとにしないでくださいー!」

 ほら、ほら、と手を振って私はヘニャと笑った。

 ライアン兄さまも情けない顔で「お願いします、殿下」と頭を下げる。

 マーカス殿下はアルを見、アルはまだ強張った顔のまま、頷いた。

「僕は何もなかったからいいけれど……アリッサは本当に大丈夫かい?」

「はい。あ、帰ったら、すぐにこの遊びの安全対策を考えますから!」

「いや、そうじゃなくて……」

 アルの手が伸びて、私の左手をそっと包んだ。眉間に少しシワが寄ってる。

「ごめん。……家に帰ったら、公爵には見つからないようにちゃんと手当てをするんだよ?ああ、こんなに赤くなって……ちょっと待ってて」

 言い置いて、アルは部屋を出てゆく。

 しばらくして美しいレース作りの手袋を手に戻ってきた。

「帰りに他からその傷が見えないように、これをあげる」

「ありがとうございます、アルフレッド殿下」

 

 王城からの帰り道。

 馬車に揺られながら、アナベル姉さまはジットリとした目で私とライアン兄さまを見つめて口を開いた。

「あの茶番、何?」

「あの茶番ってなんの話だよ、アナベル」

「……ふぅん。言う気はないんだ?あっそ」

 やっぱり茶番ってバレてる。

 だよねー。私にピッタリの手袋がすぐ出てくる時点でおかしいもんね……。

 でも、アルの有責でケガするのはお父さまにダメって言われて、必死で頭を捻って作った策なのよぉ。誤魔化されてください。

 姉さまはダメだったけど、たぶん、周りの侍女や侍従たちは騙されたと思う(マーカス殿下も素直に受け入れているように見えた)。その人たちが騙されてくれたら、勝手にウワサが広がるから目的達成なんだけどね。

 ちなみにアルは、紅茶をかけたフリをするつもりだったらしい。

 しかしそれだと王宮医に治してもらってすぐ終わりだ。なので、人払いしたときに説明をして茶番に付き合ってもらった。

 ただ、派手に見えるよう雷の魔法を発動させたせいですごい反動が起き、手が腫れ上がったから……今頃、ショックを受けているだろうなぁ。悪いことしちゃった……。

 とりあえず、帰りは手袋のおかげで安心して王城を出られる。

 入るときは、右手に聖印が書かれたメダルを持って、ずっと左の甲にそれを当てていたのだ。

 王城の公の場所はあちこちに闇属性を検知する装置が仕掛けられていると聞いて、ずっとヒヤヒヤしっ放しだったよ……。

すぐに治るはずなのに、その後も手袋をしているアリッサと見て、周りは「やっぱりアルフレッド殿下のことが好きなんだ~」という目で見てます。アリッサだけ、そのことに気付いていません。

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