久々に王都の商会へ!
今日は―――アナベル姉さまと一緒に、久々に王都のカールトン商会~!
え?
お父さまたちの説得はどうなったかって?
ふふふふ。
セオドア兄さまの読みは間違いなかったね。お祖母さまは私とアナベル姉さまが提出した護衛計画書に納得してくれて(ただし、私は“勝手に一人で動き回らない”という誓約書を書かされたけど)。その後、即、行動開始。
計画書を手に、あっという間にお父さまもお祖父さまも黙らせちゃったのよ~。理路整然、反論するスキ無し。
それでもお祖父さまがモゴモゴ何かを言いかけたら、「残念だわ、オーガスト。ではわたくし、家を出てゆきます」の言葉でお祖父さま、陥落。
「イーディス!儂を捨てんでくれ~」
って、お祖父さまの悲壮な叫びにはビックリしたなぁ。
すごい。お祖母さま、めっちゃカッコいい!これからは一番尊敬する人は誰?と聞かれたら、お祖母さまを挙げるわ……!
「お久しぶりです、アリッサお嬢様」
アルダー・ル雑貨店へ行くと、商会の店長であるブルーノがにこやかに迎えてくれた。
「お嬢様の事情は存じておりますが、王都の商会へ来られる日をずっとお待ちしておりました。なにせ、当商会はお嬢様の信奉者も多うございますからね。お会いしたいとの声が本当に多くて」
「そうなの?私のことなんて、みんな忘れてるかなって思ってたのに」
「何を仰るやら」
そっと店を覗くと、お客様の姿は少なかった。
少しご年配のご婦人がゆっくりと棚を見て回っている。
「今は少ないでしょう?冬至祭後からようやく落ち着いてきた感じですね。雑貨店なら、普通はこんな感じでしょう。店開きをしてからずっと、怖ろしいほど混んでおりましたよ。お嬢様が開発された紙綴じ器や見出し用紙の噂を聞いて、わざわざ遠くから来られた方も多くて。ああ、そうそう、普段は学生もよく来ますねぇ。今は冬季休暇中ですから姿はありませんが」
ふむふむ。
あ。学生が多いなら……。
「あのね。文字や模様の箔押しって、頼まれたらその場ですぐ出来る?」
「箔押しですか?器具さえあれば、出来ます」
「じゃあ、学生がノートを買ったとき、イニシャルを箔押しするサービスをして欲しいな」
ブルーノが目を見開いた。
「なるほど。それは良いですね」
「花とか、剣とか……動物とか、お洒落なワンポイント模様もあると嬉しい。自分のノートって分かりやすくなるでしょ」
「分かりました。手配いたします」
あと、万年筆にも使う人のオリジナリティを出したいな~。
ペン尻に、小さなチャームを付けられないかしら。
これは後でマシューに相談してみよう(今日、来ることは知っているはずなのに、マシューは他のところへ行ってるらしい)。
アルダー・ル雑貨店のあとは、隣の新生カールトン商会でアナベル姉さまとコーヒーブレイク。
……って言っても、私もアナベル姉さまも飲むのはカフェオレだけどね。
こっちは賑わっていた。
私たちを見かけて、ほとんどの人が挨拶してくる。
前は“店員”として店に立っていたから、商品の売り込みの話しかしなかったけど……今日は火龍公爵家のお嬢さま。アナベル姉さまを真似て、貴族らしい受け答えを頑張る。
でも。
やばい。
家名と顔が一致しない。家名も忘れているのがある……!
前にあれだけ必死で覚えたのに~。これは……再度、勉強し直しだぁ。
 




