お祝いはあっさり味で
新章開始です♪(来週からこれまで通り火木土の定期更新をします)
休んでいる間に、総合評価8000pt超えた記念SSも書きたかったけど……ムリでした…。
来週くらいに書き上げられたら、活動報告に上げます。いつも読んでいただき、本当にありがとうございます~。
今日は、私の7歳の誕生日。
この日はいつもたくさんのご馳走が用意されるけれど、今回はアナベル姉さまのお目覚め記念会も兼ねる大切な日になった。
ということで、姉さまのための特別なご馳走を用意しないとね!
私は、張り切って朝から厨房へ向かう。
「アリッサお嬢様、指示さえもらえれば、あとはこちらがやりますからお嬢様は向こうへ……」
厨房に入ろうとしたらジョンが必死に追い出そうとしてきた。だけど、そうはいかない。いくら私の誕生日とはいえ、姉さまのお目覚め記念なのだ。私が、自分で用意したい。
「イ・ヤ!私が、自分で、作りたいの!ジョンが作ったんじゃ、イヤなの!」
「しかしですね……」
「ジョン。今日はアリッサの誕生日よ。アリッサがしたいことをさせてあげて?」
「グレイシーお嬢様……」
いつの間に来ていたのか……グレイシー姉さまが私の後ろにいて、私の援護をしてくれた。
グレイシー姉さま……ありがとう、ありがとう!姉さまも好き!
「分かりました。では……」
渋々といった様子でジョンは許可をくれる。
ジョンも───私のためにご馳走を作ろうと張り切ってくれてるんだよね。分かってる。せめて、なるべくジョンの方は見ないようにするから!
グレイシー姉さまも手伝ってくれるということで、私と姉さまはまずスープを作り始めた。
アナベル姉さまは長い間寝ていたので、まだ固形物は食べちゃダメと言われている。本人は「大丈夫!だから食べる!」と言い張っているけれど。
まあ、そういうワケなので、姉さまのために胃に優しい美味しいスープを作るのだ。本当はお粥が作りたかったんだけどね。お米、ないもんなぁ。
ちなみにこの世界では、色々な獣の肉のダシ(?)が効いたスープが一般的だ。牛乳を使ったミルクスープもある。
ただ、前世と比べるとワイルドというか、味は濃い気がする。
なので、鶏の骨で出汁を取るスープを作ってみたいのだ。これに、生姜っぽいのやネギっぽいのを足して長時間煮込む。
「骨だけですか?」
「うん」
ジョンがさっそく興味津々で覗きに来た。普通は骨付き肉を煮込むので、骨だけってのが気になるらしい。
たぶん、肉のない方があっさり味になるはずなのよ。あと、前世で友だちがケンタッ○ーのフライドチキンの骨スープを作ったら美味しかった!って言ってたから、美味しいと思うのよね。
しっかり煮込んで出来上がった白濁スープに、小さいパスタと細かく刻んだ野菜と鶏肉を加える。まあ、イメージとしては中華粥な感じ?
味見してみたら、あっさりしてて悪くなかった。
ジョンもグレイシー姉さまも「これなら、熱があって食欲がないときでも食べやすそう」と高評価だ。良かった。
さらに。
デザートとして、プリンも作るよ~。この世界にも卵を蒸した料理はあるけれども、甘いプリンはまだないのだ。
有り難いことに(前世の)中学の調理実習でプリンを作ったから、作り方は覚えているんだよね。思い出せて、良かったよ。ま、作ったのはスが入りまくったプリンだったけど、味は問題ないし。
まずはカラメルを作って、型に入れる。次に、牛乳と砂糖を鍋に入れて、沸騰させずに砂糖をキレイに溶かして冷ます。で、割りほぐした卵をその牛乳に混ぜて……濾す。あとは型に入れて、蒸すだけ。簡単、簡単!
「これ、デザートなの?」
グレイシー姉さまが不思議そうだ。一見すると、卵蒸し料理風だもんね。
久々に家族全員が揃って。
最高の誕生日会が始まった。
お祖父さまは膝にアナベル姉さまを乗せて離そうとしない。
「もう!お祖父さま、止めて!私は小さな子供じゃないわ!」
アナベル姉さまが必死に抵抗してるけど、その横でお父さまも羨ましそうに見てるから……今日は二人の膝から降りられないかも。
ふふふ、この光景、写真に撮りたいなぁ。
そうそう。
アナベル姉さま用のスープは、お祖母さまとお母さまにも好評だった。
「これからはこっちのスープがいいわ」なんて言われたくらい。
そっかぁ。そういえば、この世界は割りと濃いめの味が多いもんね。女性向けのあっさり系需要、案外高いかも?
よし、今度、魚介類や海藻類を使った和風出汁でもレシピ開発しよう。新たなブームを起こせるかも!
なお、プリンは全員から絶賛された。やっぱりスが入った見た目の良くないプリンだったけど、喜んでもらえて良かったぁ。
さっそく、カールトン商会の喫茶コーナーで売り出してくれるらしい。
夕食後。
アナベル姉さまが私を抱き締めてくれた。
「アリッサ。寝込んでいた間の記憶はなんにもないんだけど……アリッサが私を呼ぶ声だけは聞こえていた気がするの。ありがとう。きっと、アリッサが私の命を繋ぎ止めてくれたのね」
ううん。
私に出来たことなんて、ちょびっとだけだよ。でも、姉さまが助かって……本当に良かった───。
 




