アリッサとの公式な王城でのお茶会
「別に大々的にアリッサとお茶会なんてしなくていいでしょう」
母上にそう言いに行ったら、とんでもない!と返された。
「アルとアリッサちゃん、公式で会ったことってアリッサちゃんの誕生日パーティーくらいなのよ?手紙やプレゼントのやり取りをしていることは知られているけれど、そんなに親しくはないのかな?って周りに思われているわ」
あー……、そういえばそうかも。
よく会っているし、お互いに泊まりに行ったりしてるから、その意識は欠けていた。そういえば、火龍公爵からも一度、お茶会をした方が良いという話があったような。
……マーカス兄上がお茶会をしたからなぁ。
牽制のために、僕とアリッサの二人でお茶会をやっておくのは確かに必要だ。兄上より僕の方がアリッサと仲が良いというのは、周りに周知させておきたい。
でも、王城で公式にお茶会……。絶対、見物客は多いぞ。見せ物確定だな……。
お茶会当日。
アリッサはとても可愛らしい格好でやって来た。コーデリア様も力を入れているらしい。
……やばい、すごく可愛い。変に緊張しそうだ。
だけど、火龍公爵はかなり渋い顔をしているし、アリッサも口がへの字になっている。
どうしたんだろう?
「何かあった?公爵の眉間の皺が凄かったけど」
「……ザカリー殿下、キライです」
アリッサがそんなはっきりキライと言うのが意外で、思わず目を丸くして振り返った。
これは相当、失礼なことを言い放ったに違いない。
「そっか。……弟がごめん」
「いえ。うちで販売してるゲームが面白くないんですって。別にザカリー殿下のために作ったんじゃないもん!」
……わざわざアリッサと公爵の前でそれを言ったのか。ザカリーは人に嫌われたいのか?
「あの面白さが分からないなんて、勿体ないね。ま、ザカリーは何を考えてるのかさっぱり分からないから。僕なんて、もうずっと嫌われているし。初対面のときから、まるで虫ケラを見るような目で見られてるんだ……」
まったくもって、ザカリーは理解できない。
アリッサからも、気の毒そうな目で見られてしまった。
───お茶会をするサンルームへ向かう途中、大きな塊が僕らの前に立ち塞がった。
「バンフォード大公」
王城へ公式にアリッサを招いたら、大公の誰かは出てくるだろうと思っていたけど。やはり、来たな。
「やあ。マクシミリアンの秘蔵っ子だな。マーカスとアルフレッドが夢中だと聞いたから、どんな子かと見に来たぞ。……ふうん、色合いは見事な火龍家の色だが、コーデリアの面影はあるな。なかなか将来が楽しみな風貌だ」
ああ、嫌になる。
火龍家の人達はみな、素敵なのに……僕の親族はどうしてこうロクでもないのばっかりなんだ。王族なのに恥ずかしい。
とりあえず、アリッサを背後に庇って無難な挨拶をしておく。さっさと自身の離宮へ帰れ。
 




