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もしかして悪役令嬢 ~たぶん悪役令嬢なので、それっぽいフラグを折っておきます~  作者: もののめ明
アルフレッド視点2

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たぶん、初めてのちゃんとした対話

なんだか長くなっちゃいました……。

 春華祭の日になった。

 祭服を来て、地下の神殿へ。

 春の神事は一番魔力を使う。気合いを入れて臨んだものの……終わっても、意外と体は辛くなかった。あの魔力制御運動、本当に効果すごいかも知れない。

 この調子なら……夏の神事の際、大きな花火を上げられるかも?!


 神殿から上へ戻るとき、マーカス兄上が横に来た。

 何の用だろう?

「アルフレッド。……どうしてアリッサ嬢と婚約しないんだ?」

「兄上がそれを聞くんですか?」

 そっと尋ねられて、思わず唖然としてしまった。

「いや、だってお前、彼女のこと……」

「僕が火龍公爵の娘と婚約したら、不必要な争いが起きることは目に見えています。僕がそれを望んでいると?」

 つい、きつい口調になったら、兄上の目が大きくなった。そして、ためらいがちに次の質問を口にする。

「アルフレッドは……今まで、王位に興味を持ったことはないのか?」

「持ったことなど、一度もありません。だって兄上がおられるんだから」

「…………」

 兄上は唇を噛んだ。そして少し俯く。

 しばらくそのまま、黙って僕の横を歩いていた。

 が。

「知っているか?母上も、侍従たちも、みなアルフレッドは王位を狙っていると私に言うんだ。物心ついた頃から、ずっと、そう言われて育った。だけどアリッサ嬢から、お前はそんなこと考えていないと言われて……一度、きちんと話さなくてはと思った」

「……僕の言うことを信じてくださるのですか?」

「少なくとも、アリッサ嬢が好きなのに婚約の話を進めていないのは事実だ。だから、信じてもいいのかなと思っている」

 ……待って欲しい。

 兄上の判断の根拠が。

 それ?

 これは否定しておいた方がいいんだろうか。でも、アリッサのことを好きじゃないとここで言い切って、また兄上がアリッサに婚約を申し入れても困るし……。

 すぐに答えを返せなくて、変に間が空いてしまった。

 兄上がふっと小さく笑う。

「アリッサ嬢と2人でいるところに乗り込んできたお前は、本当に怖かったよ。あんなに怖い思いをしたのは初めてだ。……それまで、何を言っても何をやっても顔色一つ変えなかったお前があれだけ怒るんだ。なんだろうな……うん、そうだな。ちょっと、ほっとした。ザカリーと違って、私にも理解できる感情のある人間だと分かったから」

「兄上にとって、僕とザカリーは同列だったんですか?!」

 思わず、愕然として声を上げてしまった。

 僕は、絶対にザカリーほど変じゃない!

 兄上はそんな僕を見て、さらに笑いを深くした。

「ふふ、ザカリーとは違って、アルフレッドは常にニコニコと愛想は良かったけれど……私から見れば“笑顔”を顔に貼り付けているだけで、何を考えているかさっぱり分からなかったよ。大体、いじめても無反応だったしな」

 いや、物置きに閉じ込められ虫攻めにされたときは、そのあと3日も熱を出したんだ。軽く言われるとちょっと腹が立つ。

「……もっと早くに、ちゃんとお前と話をすれば良かった。そうすれば、ザカリーよりよほどまともな兄弟関係が築けた気がする」

「まあ……ザカリーよりはまともなつもりです。なので、いじめられたことはちゃんと根に持ってます」

 別に今さらやり返す気はないけれど。これははっきり言っておこう。

 兄上はまた目を大きくして、僕をまじまじと見た。

「そうか。……悪かった」

 ん?まさか、そんなあっさり謝られるとは。

 僕も兄上のことは誤解していたかも知れない。

「……兄上は、やはり僕よりも王に向いてますよ」

「いきなり、なんだ?」

「僕は割りと自己本位です。なかなか自分の間違いも認められませんし。だけど兄上は違う。そのうえ、シンシア様やザカリーとも対話しようとする姿勢があるし、最悪な茶会でもきちんと務めを果たそうとしていた。それは、諸侯をまとめて国を治めるのに必要な能力だと思います。僕だったら、ニコニコ笑って知らん顔ですね」

「ふ、ふふふ……」

 とうとう、堪えきれないように兄上は声を出して笑い始めた。

「茶会で、分かっていて何も喋らなかったんだな?可哀想に、アリッサ嬢は気を揉んでいたのに」

「アリッサは……いつもは自由気ままなくせに、妙なときに妙な気を回しすぎで……」

 つい、愚痴ってしまった。でも、本音だから仕方がない。

 兄上はふうんと頷き、首を傾げた。

「そうか。アリッサ嬢からは愛称で呼ばれていたし、お前たちは噂で聞く以上に仲はいいんだな。……で。結局、アリッサ嬢のことは諦めるのか?」

 えええ?!

 何故、ほぼ今日初めてまともに会話した兄上に、こんなにグイグイと聞かれなきゃいけないんだ?兄上は、他人の恋バナ好きか?

 返答せずに黙っていたら、にやりと笑われた。

「アルフレッドが身を引くなら、私は懲りずにアリッサ嬢へ言い寄ってみようかと考えているんだが」

「無駄ですよ」

 挑発されていると思ったが、堪えきれずに返してしまった。

「火龍公爵が認めません。そもそも公爵は、アリッサを手元に置いておきたいくらいなのですから」

「それでも、アリッサ嬢の方は分からないだろう。私も、あんな風に気楽に話せたご令嬢は初めてなんだ」

「アリッサは、平民にも同じように話しますよ」

 兄上は決して彼女にとって特別じゃない。そんな意図を乗せて牽制する。

 気が付けば、僕らは階段の途中で立ち止まっていた。父上も大公たちも、とっくに姿が見えない。

「何故、そんなに必死になる?」

「兄上の方こそ。クローディア嬢を望んでいたのではないんですか?」

「あれだけ避けられていて、婚約も何もあったものじゃない」

「ともかく。アリッサを、王家のしがらみの中には閉じ込めないでください」

 兄上は黙り、真剣な目で僕をじっと見つめてきた。

 ……居心地が悪い。

 そのまま、さっさと階段を駆け上がろうかと思い始めた頃。兄上が低く言った。

「お前を信じると言ったのは半分が本当で、半分は嘘だ。お前がアリッサ嬢を手に入れたいと思っている限り……私と敵対しないとは言い切れない」

「さっきも言いましたよね。アリッサは、自由がいい。彼女を王家に閉じ込めたくない。故に第二王子としての僕との婚約話を進める気はないんです」

 もう、いい加減にしてくれ。

 ここで、こんな話をしても意味がない。僕が密かに立てている将来の計画はまだ不透明だし、それ以前にアリッサは周りがどう言おうと望まない婚約には「うん」と言わない。兄上と僕との間で、こんな問答をしても、時間の無駄じゃないか。

 ふと、兄上が何かに気付いたかのように、瞬きした。

「なる……ほど。お前は……思っているよりきちんと先のことを見据えているんだな……」

 ?

 何故か、急に納得した顔になり―――兄上は「さあ、父上たちを待たせている、早く行こう」と歩き出した。

 一体、何に納得したんだ……?

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく読んでます! よくも悪くもお兄様は王様向きなのかな!
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