意外と不器用なことに気付いてしまった……
この頃、寝る前にアリッサへ渡すための防御のお守り作りに取り組んでいる。
というより、作るための練習をしている。
何故なら、魔石に防御の魔法を付与するのが難しいからだ。
基本的に魔石一つにつき、魔法は一つしか付けられない。そして石に直接、魔法印を刻むので(魔法陣とはまた別種)、あまり複雑なものは無理なのだ。
この、“刻む”ことが熟練の技が必要で難しいのである。
ちなみに発動する魔法の大きさは魔石の大きさや質に比例する。
昔の偉大な魔術師の肖像画でやたら宝飾品をジャラジャラ身に付けている人を見かけるが、あれは決して装飾目的ではなく、護符だの魔力増幅だの、様々な効果を自身に掛けているから、という訳だ。
まあ、つまりはそういう魔石をアリッサへ贈りたいのだけど。
やはり、どうせなら武骨なものより、アクセサリーとして普段身に付けていてもおかしくない可愛いものを渡したい。
となると、あまり大きな魔石では不細工だろう。なるべく、小さめで質の良い魔石がいい。
……ということで、せっせとただの石に印を刻んで、練習をしているのだ。
僕の手で下手な印を刻むのではなく、専門の人間に任せた方がいいのは分かっている。しかし、いずれアリッサの魔力量を抑える魔道具を作らなくてはならない。その魔道具には、何種類もの魔法を組み込むことになるだろう。恐らく印を刻んだ魔石も必要だ。だけど、この件に関しては外注に出せない。どこでどう漏れるか分からないからだ。だから、僕ができるようになっておきたいのだけど。
毎日1つか2つは刻んでいるのに、一向に上手くならないだよなぁ。
僕は、こういう細かい作業は向いてないのかも知れない……。
それと。
防御といっても、例えば魔法なら火の攻撃、雷の攻撃、水での攻撃など攻撃方法の種類よって防御の魔法も変わってくる。複数をジャラジャラ付けるのは、それこそ戦地へ赴くのか?!と思われそうだ。だとすれば……一体、どんな内容のものを刻めばいいだろう?
まったくもって、魔法も万能じゃない。思い通りにいかないことだらけだ。
さて、その魔法について、ウォーレンから
「こ、こここの頃、せ、精度が上がってきたね……」
と言われた。
自分でもそう思う。今の僕は魔力が無駄なく綺麗に流れている感じ。
だから、今までよりも少ない魔力消費で魔法を発動できるし、そのせいで使いながらも余裕を持てる。余裕があると、当然、精度が上がるという訳だ。
この件に関して、心当たりがあるとすれば……アリッサから教わった魔力制御運動だろうか。
アリッサが魔力瘤があるのにあれだけの魔法を使えたのも、納得する。これ、学校の授業に取り入れた方がいいんじゃないか??
ただ、あの運動をみんなで一斉にやると……ちょっと笑える図になりそうだけどね。
 




