嬉しい誘いと、冬至祭
アリッサから、まさかのパジャマパーティーのお誘いがあった。もちろん、僕一人じゃない。
水龍公爵家の双子と一緒だ。というより、僕は双子のおまけで誘われただけだろうけれど。
それでも、嬉しい。
火龍公爵家に泊まれるなんて!
夢みたいだ。
王族の人間が、気軽に他家へ泊まるなんて出来るはずがないと思っていたけれど……ああ、やっぱりアリッサはすごい。
大きな壁があっても、きっと全然気にしないで乗り越えてしまうんだろう。
エリオットもクローディア嬢も、同じように思っているに違いない。
楽しみが出来たので、冬至祭もご機嫌で臨んだ。これが終われば、そんなに経たずに火龍公爵邸へ行ける。こんなウキウキした気分で神事に向かうなんて、初めてじゃないだろうか。
───いつもの白い祭服に着替えて地下の祭祀殿へ。
四節の神事はどれも大変だが、この冬至祭は、正直、一番気合いが必要になる。何故かといえば、裸足で神事を行うからだ。このやたら寒い時期に裸足とか、初めてのときは神の嫌がらせかと思ったくらいだった。
冬の神は死と再生の神。
そのため、僕らも疑似的な死と再生を体験させられるのだとしても。何もこんな方法じゃなくていいのに、と思う。
先に祭祀殿にいたザカリーが、いつにも増してムクれた顔をしていた。足を小まめに動かしているので、足先が痛いのだろう。
普段、あまり感情を表に出す方ではないくせに、不満だけは隠そうとしない。
一度くらい、ムスッとした顔でなく、年相応の笑った顔を見てみたいものだ。でも、見たらきっと腰を抜かすだろうなあ。
父上の低く歌うような祈りの声に続いて、僕らも祈りを捧げる。
足先の痛みがもはや分からなくなるくらい長い祈りを捧げて、ようやく神事が終わった。
いや、足先だけじゃなく全身が完全に冷えてしまって、途中からは歯が鳴らないようにするのが大変だったくらいだ。
さらに歩き出したら、足先の痛みが再びぶり返してきた。というか、足の裏の肉がカチコチに凍ってしまった感じで、床に足を下ろすたびバキン!と割れそうだ。痛い。
階段の一歩一歩を気の遠くなるような思いで上り切り、絨毯の敷かれた暖かい部屋に入って……ようやく肩の力を抜いた。
椅子に座ってホッと息を吐く。すると、バンフォード大公と目が合った。
「なんだ。あれくらいで足が痛いのか?お前もまだまだ未熟だな」
ふん。
体も足裏も、たっぷり脂肪に包まれている大公に、この寒さ、痛みなんて分かるわけがない。
(ちなみにその後ろでは、痩身のソーンウォール大公が青を通り越して祭服と同じ真っ白な顔になって幽鬼のように立っていた……)
 




