今後の相談、そして魔力操作上達のコツ
アリッサも落ち着いたので、今後の話をする。
やはりアリッサは、魔力量が高いことを隠す方向を選んだ。マーカス兄上と婚約する選択はしないと思っていたけれど、ホッとする。
ウォーレンとは事前に、もしアリッサの魔力が高かった場合、それを他に知られないようにする方法はないか、話し合っていた。想定より遥かに高い魔力量だったが、やるだけやってみなければならない。
「魔力抑制装置?」
「そう。魔力が暴走したときに付ける腕輪があるんだ。あれを基に、魔力を抑える道具を作ってみようかと」
「そんな腕輪があるんですね。すごい!」
「た、ただ……き、ききき君の魔力量が……かなり、た、高いから……ちょ、ちょっとむ、難しいかも……しれない……」
ウォーレンの自信なさげな言葉に、アリッサはブンブンと首を振った。
アリッサの目が、やる気満々だ。
「てゆーか、いいんですか?この力のことを隠すのにアルやウォーレンさんが関わったら、バレたときが……」
「大丈夫。全力で隠す」
だって、それ以外に僕がアリッサの隣にいられる方法はないのだから。
アリッサはまだ気にした様子を見せたが、「気にしなくていい」と断言したら……ほんの少しだけ、ホッとした顔で笑顔になった。
強気なふりをしているけれど、本当は不安でいっぱいなんだろうなあ。
魔力抑制装置とは別に、アリッサの魔力瘤も治さなければいけない。このままでは、魔法が暴発する恐れもあるからだ。
「で、ででででも……き、君は……ま、魔力の……つ、使い方がすごく……む、無駄がなくて、す、すごい……ね……」
ウォーレンが感心したように言う。
そう、先ほどの凄まじい火炎。あれは、魔力瘤があるなんて思えない規模の炎だった。
「太極拳……じゃなくて。えと、自分の身体の中を、血液みたいに魔力が巡るイメージを持って練習したから……かも」
「身体を巡るイメージ?」
「うん。最初は上手くいかなかったけど、毎日くりかえしていたら、どんどんスムーズになっていって」
へえ。僕も試してみようかな……?
アリッサを少し待たせて、火龍公爵に今日の結果を話しに行く。
「……魔力量がウォーレン殿より多い?!」
ぎょっとした顔で公爵が僕を見る。
「そんな。アリッサは、生まれたときの測定では、一般的な貴族子女のレベルでしたよ。あのレベルから、ウォーレン殿を超える魔力量になるのは、どう鍛えても有り得ない!」
「そうですね。僕もそう思います。でも、現実は現実ですから」
はああ……と公爵は頭を垂れた。
「あの子はいろいろ想定外だと思っていましたが、ここまでとは。……陛下に報告されますか?」
アリッサと同じ金の瞳が、深い悲しみを湛えながらこちらを向く。
四龍の一人として、彼は己の役割をきちんと心得ている。アリッサをとても大事に想っていても、取るべき道は見誤らない。
しかし僕は首を振った。
「僕はアリッサが国の脅威になるとは思えない。そして、国の道具にされるのも嫌です。だから……隠す方向で行こうと考えています」
「よろしいのですか。殿下の進退にも関わりますぞ」
「承知の上です」
迷わずに答えたら、公爵は僕の手を握って、深く頭を下げた。
「自分の役目は重々分かっているのですが……あれに隷属の首輪を付けさせ、飼い殺しにするなど、親としては耐えられない。……有り難うございます、殿下。守る道を選んでくださって」
「まだ、ちゃんと守れるか分かりませんよ。周囲に気付かれないよう、魔力を抑えることがどれだけ出来るか……学院に入学するまでの大きな課題です」
「それでも。何もしないよりマシです」
良かった。四龍の役割を守るため、アリッサの件は公にする!と言われずに済んで。
さあ、ここから魔力抑制装置の開発に力を入れていかないと!




