いろいろと、想定外
アリッサにウォーレンを紹介する。
ウォーレンは極度の対人恐怖症で、僕以外とはほぼ話せない。そばに人が寄ることも嫌がることが多い。ウォーレンがアリッサに会いたいと言い出したとはいえ……大丈夫かな?
だけど、目が合った瞬間は脅えたものの、アリッサの方が落ち着いて視線を逸らしながら対応してくれたからだろうか。自ら近寄り、話し掛け……手を繋ぐことまでした。
そうか。ウォーレンは視線を合わせないということだけで、だいぶ安定するんだな。
そういうことをすんなり見極められるアリッサは、やっぱり凄い。
ただ。
…………安全面を考慮してのことだとは分かっている。
でも、あのウォーレンが?
自ら、手を繋ぐと言い出した??
背中で出来るなら背中でいいじゃないか。
いくらなんでも、一気に気を許しすぎじゃないだろうか。
アリッサもアリッサだ。明らかに挙動不審で不気味な雰囲気を醸しているウォーレンを、微塵も怖がらないなんてどうかと思う。
なんだかなー、モヤモヤするなぁ……。
しかし、アリッサが思いっきり放った火球は、そんなモヤモヤが一瞬で吹っ飛ぶほど凄まじいものだった。
最初に出現したのは顔より大きい火球で、案外小さいな、と思った。
それが瞬く間に部屋全体に広がる火球になる。
火の大きさを変える魔法はある。だけど、こんな風に火球を一気に巨大化させる魔法なんて、見たことがない。というか、魔力瘤があるから普通よりも魔法を顕現させにくいはずなのに……これ、規模がおかしくないか?
独学で魔法を習得し、たった6才でこれ……?
呆然としていたら、ウォーレンがうっとりとした口調で自分より魔力は上だと言った。
あああ……。
もしかしたらと心配していたことが、こんなにも見事に的中するなんて。
これを、父上達には気付かれないよう、どうやって処理すればいいんだろう?
なんだか身体中の力が抜ける感じがして、思わず僕は壁に頭をつけた。
その後、塔の上階のウォーレンが日頃過ごしている部屋へ。
アリッサは自身の置かれている立場が危ういものだとは全く気付いていないからだろう、再び目がキラキラと輝きだした。たくさんの魔術書や道具に心惹かれているようだ。
しかし、今はそれを堪能させてあげるわけにはいかない。
アリッサだけでなく、リックにも座るよう促し、僕は何と話を進めるか頭を悩ませた。
「えーっと、それで……わたしの魔法に、何か問題あるんですか?」
さすがに僕の表情で分かったらしい。恐る恐る、アリッサが聞いてくる。
ウォーレンが困ったように口を開いた。
「き、ききき君は……ま、魔力量が異常に……高い……」
「そうなんですね」
「そ、そそのレベルは……か、管理対象に……な、なる……」
アリッサはポカンとした表情だったけれど、その横に座るリックの方がすうっと血の気を失った―――。
アリッサの魔力量も想定外だったけど、ウォーレンがあっさりアリッサに気を許したことがアルフレッドにとって一番想定外だったり……。




